自閉症スペクトラム研究
Online ISSN : 2434-477X
Print ISSN : 1347-5932
実践報告(投稿論文)
発語の見られない広汎性発達障害児への言語コミュニケーション指導としての乗馬療育
慶野 裕美慶野 宏臣
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2012 年 10 巻 2 号 p. 65-70

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抄録

乗馬療育は動物介在活動のひとつであるが、近年この療育が広汎性発達障害児に、対人関係の改善、パニックの減少、集中力の強化、順番待ちの確立などの効果をもたらすことがわかってきた。しかし、広汎性発達障害児が最も苦手とする言語コミュニケーションの獲得や強化については効果が出にくいとされている。本研究では、言語コミュニケーションの獲得を目的とした、乗馬しながら実施する8 段階の言語促進プログラムを開発し、言語を獲得していない5 名の広汎性発達障害児に実施し、その児童達の発達を観察した。4 歳と5 歳から毎月60 分の乗馬療育を受けた児童は共に2 語文を使うまでになった。しかし4 歳から乗馬療育を始めたが、定期的に参加しなかった1 児童は反響言語獲得に留まった。言語コミュニケーションを獲得することが困難とされる7 歳児では、喃語、反響言語獲得まで進んだが、発語には至らなかった。ところが、8 歳から乗馬療育を開始し、定期的にこのプログラムを受けた1 児童は、反響言語を多用し、乗馬療育開始後4 年では内容を理解した3 語を活用できるまでに発達した。乗馬しながらの言語促進プログラムは言語コミュニケーション獲得に有効性があることが認められた。しかし有効性を明白に立証するためには、より実証性の高い実践を行う必要がある。

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© 2012 NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
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