2013 年 11 巻 1 号 p. 39-49
衝動的で、不注意な面が強く、友達とうまくかかわったり、落ち着いて学習したりすることが難しかった小学3 年生男子A に対して、通級指導教室で週2 回の個別指導を3 年間行った。『6 つの包括的なアプローチ』を支援軸として、A の気持ちやテンションを自ら調整させることや学習への動機を高め、その態度や習慣を変容させることを目標とした。その結果、紆余曲折しながら、A はもやもや、イライラした感覚を“怒りの爆発”と名づけ、怒りの感覚を感情として理解できた。その後、年度を重ねるごとに攻撃的な言動を抑えたり、自分の思考を対象化したりできるようになった。2 年目には、クラスの漢字テストで点数をとることを目標とした「ホームワーク」を行った。文字の形が整い、漢字テストで合格ラインを超す高得点を得ることもときには見られた。A は、クラスで穏やかに学習したり、友達と良好な関係を築いたり、将来の見通しや希望について語ることができるようになった。これらの支援は、さまざまな「“気づき”の実感」や対人関係や学習への「苦手意識の消去手続き」ととらえることができ、今後のA の学校生活における支援として、重要な方法論と示唆された。