2018 年 16 巻 1 号 p. 37-45
書字は学校における全ての教科において重要なスキルであるが、多くのASD児は書字に困難がある。また、電子機器やアプリケーションを用いた介入やセルフマネジメントなど、ASD児に対して有効な介入は明らかになっているものの、ASD児の書字における研究は少ない。本研究は、ASDの診断があり、学校や家庭において書字において頻繁に修正が必要な小学1年生の女児に対し、ビデオモデリングと自己評価手続きの効果を比較した。教材として、漢字プリントで用いる見本の大きさを決めるための事前課題、学校で学習済みであり、バランスが整っていなかったり、誤字が見られたりする漢字のトレース課題、望ましい書字行動と望ましくない書字行動を示したビデオ、書字行動を評価するための評価シートを用いた。ベースライン条件では、対象児は見本からはみ出さないように指示を出された後、漢字のトレース課題に取り組んだ。ビデオモデリング条件では、ビデオを見て、モデルがゆっくりと書いているか、見本からはみ出していないかを評価した後、漢字トレース課題に取り組んだ。自己評価条件では、漢字トレース課題の後、ゆっくり書いたか、見本からはみ出していないか、自身の行動を自己評価した。その結果、ビデオモデリング条件よりも自己評価条件の方が見本からはみ出さずに漢字をトレースすることが示された。また、それぞれの手続きをフェイドアウトした後、ベースライン条件よりも見本からはみ出さずに漢字をトレースすることが示された。