2021 年 18 巻 2 号 p. 33-40
研究の目的:自分の体を洗うことができない児童を対象にビデオモデリング(VM)とビデオプロンプト(VP)を含むビデオベース介入(VBI)の効果を検討した。また、VBIによって標的行動の獲得と家庭の入浴場面への般化がみられるかについても併せて検討した。対象児:自閉症スペクトラム障害(ASD)を抱える6歳男児1名を対象とした。場面:対象児が通う療育施設と家庭の入浴場面を利用した。標的行動:入浴に求められる16の行動ステップで構成された一連の行動を標的行動「入浴スキル」と定義した。介入:入浴スキルを実行している様子を第三者の視点(客観的視点)から撮影したビデオを提示するVMと、入浴スキルを実行している様子を対象児本人の視点(主観的視点)から撮影し、入浴スキルの課題分析を行ったビデオを提示するVPを実施した。結果:VM条件では介入効果が限定的であったが、続けてVP 条件導入後では入浴スキルの獲得を促すことができた。考察:VBI(VMおよびVP)がASDを伴う児童に対する日常生活スキルの獲得と般化を促す介入法として有益であることが示された。またVM条件にて介入効果が限定された要因と、VP条件にて入浴スキルの獲得を促すことができた要因について考察した。今後は研究デザインを改め、対象人数を増やした追試研究を行うことに加え、どのような対象者や条件下においてVBI(VMおよびVP)が効果的に作用するのかを検討していく必要がある。