自閉症スペクトラム研究
Online ISSN : 2434-477X
Print ISSN : 1347-5932
講演録
自閉スペクトラム児・者支援のこれからの実践課題
吉川 徹
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2024 年 21 巻 2 号 p. 5-10

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Abstract

自閉スペクトラムへのさまざまな支援の領域において、量的な問題への対応は大きな実践上の課題となっている。近年の調査では、日本の多くの地域で5歳までに自閉スペクトラム症と診断される子どもは3%を超えている。スクリーニングの感度の上昇や診断基準の多元化などにより、今後更に多くの支援が求められる状況が予想される。 医療分野では、専門医の不足が深刻な問題となっており、高い専門性を持つ医師や医療従事者の養成と一般医の対応力向上が求められている。 福祉分野では、例えば放課後等デイサービスの場合、供給量は増加し、多くの地域で量的な需要を満たすことに成功しているが、これに対しサービス供給の総量規制や支援の基準の引き上げが行われるようになっている。一方で相談支援専門員など、量的に不足している領域もあり、資源配分の適正化が求められている。教育分野では、通常の学校や学級で自閉スペクトラムに対応するための支援が進められているが、通級指導教室の拡充や一般教員の対応力向上が求められている。 これらの課題に対応するため、各分野での専門性を持つ支援者の養成や、ICT機器、AI、ロボットの活用が必要である。現場で活動している各々の支援者が、地域の中で果たすべき役割を再考することが求められている。研究者もまた、研究成果の社会実装を進め、支援者の実践課題達成を支える役割を果たすべきである。

References
 
© NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
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