抄録
ベネズエラ国営石油(PDVSA)が推進するオリノコ重質油帯の開発戦略を紹介し,アヤクーチョ地域バレ油田の大規模油層(U2-3層)で実施した統合スタディーについて説明する。オリノコ重質油帯は東ベネズエラ堆積盆の南部に位置し,面積は54,000平方キロメートルに至る。主要産油層準は漸新統および中新統に発達し,河川成ないしデルタ成堆積物からなる。PDVSAは1978年から1993年にかけて大規模な探鉱開発を実施し,その原始埋蔵量を1.9兆STB,可採埋蔵量を2,720億STB(回収率14%)と評価している。現在,ベネズエラは可採埋蔵量780億STBであるが,前述の埋蔵量が加われば世界で最大の埋蔵量を持つ国家になる。オリノコ重質油帯では水平坑井やマルチラテラル坑井の掘削およびESPやPCP等の人工採油技術の導入により,25年前の開発初期と比較して,坑井の生産能力は30倍近くに改善された。また,1991年にはUS$3/bblであった操業コストがUS$1/bblまで減少した。1996年以降は外資系石油企業と共同事業を立ち上げて開発に着手し,重質原油の比重を下げるため,ディレードコーキングなどの改質プラントを建設した。今後も外資系石油企業との共同でのビジネスモデルは原油の改質まで含めた事業となり,改質原油のマーケットに多様性を持たせる方針である。これに基づき,2012年には現状の生産量62万bbl/dを120万bbl/dまで増産する計画である。バレ油田の統合スタディーでは,地球物理学,地質学,ペトロフィジックス,石油工学などの多様な情報を統合し,地質推計モデルを構築した。その結果,U2-3油層の原始埋蔵量は19億STBであること,および同油層砂岩の発達は堆積時の古地形に強く支配されていたことが判明し,未開発エリアの開発最適化に大きく寄与した。これに基づく油層シミュレーションでは,水平坑井やマルチラテラル坑井による生産手法を評価し,早期のガス生産を抑え,ESPやPCPなどの人工採油技術の効率を最適化する流動坑底圧力を明らかにした。本スタディー後,最初に掘削された水平坑井MFB-664は,その水平区間長5,070 ftがPDVSAの最長記録の更新となり,その初期生産レートは2,130 bbl/dに達した。またマルチラテラル坑井(2ブランチ)のMFB-667は水平区間の総延長8,260 ftという記録を樹立,その初期レートはドローダウンを最小限にとどめても1,820 bbl/dに達した。一方で,PDVSAは重質油の回収効率を改良するため,革新的な仕上げを行っている。その例として,インテリジェント仕上げやセレクティブスチームインジェクションが挙げられる。