石油技術協会誌
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~石油開発における環境保全への取り組み~
上流ビジネスにおける随伴ガスの有効利用に対する新しいアプローチ
タン・ ドー・ゴック
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2007 年 72 巻 2 号 p. 178-187

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抄録

新日本石油開発(株)の子会社である, 日本ベトナム石油(株)は, ベトナム沖において, 探鉱・開発・生産操業を実施している。1998年生産が開始されたランドン油田において, 当初, 原油生産に伴う随伴ガスは, 経済性を理由に海上において燃焼させていたが, このガスを有効活用することは, 環境保護とエネルギー保護の観点から懸案であった。2001年, 我々は将来Clean Development Mechanism (CDM) として認定されることを想定し, 近隣油田であるバクホー油田までパイプラインを引くことにより, 随伴ガスの大半を陸上へ輸送し, 発電用燃料やベトナム国内の家庭用燃料として使用するプロジェクトを開始した。2006年, 本プロジェクトは正式にCDMプロジェクトとして登録されたが, これには5年の歳月を要した。本文では, プロジェクト概要と登録までの道のりを通して学んだ経験・教訓を述べる。
CDMプロジェクトの登録完了までの5年間は, 前例がないことから, 温室効果ガス削減量算定の方法論の確立, ランドン油田・バクホー油田・ディンコーガス処理工場と3箇所でのガス量の測定方法の確認, 2011年までの温室効果ガス削減予想量の確定に関する認証機関との折衝に費やされた。プロジェクトを進めるにあたって, 当社およびそのパートナーのみならず, ベトナム政府, 国営石油会社, バクホー油田, ディンコーガス処理工場へのこの新しいプロジェクトの意義の説明, データ提出およびガス量検証作業への協力が不可欠であった。一方で, CDM関連の規則がたびたび変更になり, そのつど, 関係組織に変更点を説明し理解を得ることも必要であった。
これらの努力, 折衝を通して, 2006年2月4日に正式にCDMプロジェクトとして登録された。プロジェクト期間は2001~2011年までの10年間と定められ, 温室効果ガスの総削減量はCO2換算で680万トンと認定され, 本スキームにおける世界最初で, 最大削減量のプロジェクトとなった。

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© 2007 石油技術協会
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