石油技術協会誌
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論説
選択的陰解法によるストリームライン法3相平衡多成分系モデル
赤嶺 耕也田中 秀晴在原 典男
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2009 年 74 巻 3 号 p. 211-224

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抄録

油ガス回収プロセスにおいて相間の流体成分移動が重要なファクターである場合,生産挙動を適切に評価するには多成分系シミュレーションが必要である。多成分系シミュレーションは圧力と飽和率に加えて相の組成を計算するもので,特に高速な計算パフォーマンスが望まれる。ストリームライン法は,計算効率において従来の有限差分法より優れた手法であり,当初は非圧縮性2相流のために開発されたが,圧縮性効果を含むブラックオイルモデルおよび多成分系モデルにも適用可能であることが示されている。
本論文はストリームライン法による三次元3相多成分系油層シミュレータの構築ならびにその応用についてまとめたものである。ストリームライン法はIMPES法の一種であり,まず成分モル収支式から導かれた圧力式を陰的に解いてグリッドブロックの圧力を求めた後,一次元モル保存式を陽的に解いてストリームラインに沿った組成と飽和率を計算する。本モデルには,流体圧縮率のモデル化および3相平衡計算という2つの重要な機能を組み込んでいる。有効密度の概念を一次元式に適用することによって,ストリームライン上の流体の体積変化をもたらす圧縮性のモデル化を図った。また,本モデルには,各相の圧力,飽和率,および成分モル分率が急激に変化する坑井ブロック周辺における計算精度を向上させるために,選択的陰解法を適用した。
モデルの検証のために,本モデルのシミュレーション結果を商用の有限差分法モデルの結果と比較し,両者がよく一致することを確認した。さらに,モデルの適用例として枯渇油層における炭酸ガス圧入のシミュレーションを実施し,3相平衡計算の信頼性を例証した。水飽和率計算の改善が今後の課題である。

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