石油技術協会誌
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講演
反射法地震探査データ解析の定量化による岩相・流体予測
―理論と実例―
常山 太高原 一峰長友 晃夫谷岡 慧榎本 美津郎西塚 知久
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2014 年 79 巻 1 号 p. 43-53

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抄録

出光では, 重合前震探データの解析によって岩相や飽和流体を直接検知する技術に着目し, 岩石物理学と震探・坑井データの評価の実践的統合により, 発見確率の向上を図ってきた。本稿では, 岩石物性と直接検知技術の関係, およびケーススタディを紹介する。
炭化水素を胚胎する砂岩は, AVOクロスプロット上で, P-Impedance値とVp/Vs値の減少により, 原点を通る泥岩のトレンドから第3象限側へ大きく変位したトレンドを形成し, 一方で, インヴァージョン解析では, P-Impedance値を横軸, Vp/Vs値を縦軸としたクロスプロット (RPT: Rock Physics Template) にて, より定量的な区分が可能となる (Ødegaard and Avseth, 2004)。RPT上では孔隙率の減少, 泥岩・砂岩, 内部流体の飽和率に応じてプロット領域が異なり (Dvorkin and Nur, 1996), 炭化水素胚胎砂岩は, 特に低P-Impedance値かつ低Vp/Vs値の領域にプロットされ, 泥岩・水飽和砂岩との分離が可能である。
ケーススタディの坑井Xでは, 砂岩貯留層Aおよび炭酸塩岩貯留層Bが確認され, いずれもガスの集積が認められた。砂岩層Aでは, 坑井X検層データのZoeppritz式による入射角変化に対応した合成地震記録と, 実際の重合前震探データの両者で入射角の増加に伴いインピーダンス低下の振幅応答が強くなるAVOを確認した。この応答は, AVOクロスプロット上では, 泥岩のバックグラウンドトレンド (BGT) からAVO Gradient値が負の方向に乖離する。一方, 炭酸塩岩層Bは, 泥岩BGT上に位置し, 両軸の絶対値が著しく大きい特徴を持つ。この違いに着目し, 異なる傾きを持つ2つのBGTからの乖離を計算し, 砂岩および炭酸塩岩を強調した重合データ (Sand stack, Carbonate stack) を作成した。
インヴァージョン解析では, 坑井検層データのRPTにて, 砂岩層Aは顕著に低P-Impedance値かつ低Vp/Vs値の領域にプロットされ, さらに, 水飽和への入れ替えにより, ガス飽和砂岩が泥岩や別の水飽和砂岩層と分離可能と確認した。炭酸塩岩層Bは, 約9.5km/sec*g/cc以上の高P-Impedance値が特徴的である。ただし, ガス飽和の炭酸塩貯留岩も他の岩相との重複が大きく, 区別は困難であると判明した。上記の区分を, P-ImpedanceとVp/Vsの三次元データに適用して, 岩相・流体の空間分布を予測した。ただし, この手法では, ガス飽和砂岩と水飽和砂岩の遷移帯等を連続的に表現できない。そこで, RPT上で泥岩あるいは水飽和砂岩を表すトレンドを設定し, そこからの乖離を定量的に表現するアトリビュートの併用も必要となる。両解析により, ガス胚胎砂岩層Aと炭酸塩岩層Bおよび類似した貯留層が, 隣接する断層ブロックや坑井Xの到達深度以深にも堆積している可能性が示唆された。

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© 2014 石油技術協会
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