石油技術協会誌
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講演
メキシコ湾大水深域の生産油田における回収率向上への取り組み
石原 直人新粥 岳彦五十嵐 哲高島 幸作
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2015 年 80 巻 6 号 p. 444-448

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抄録

JX日鉱日石開発株式会社 (以下JX) は, 米国子会社を通じて, 2007年からメキシコ湾の大水深域にあるK2油田の開発にノンオペレーターとして参加している。K2油田はニューオリンズから南に約180マイルのメキシコ湾グリーンキャニオンエリアに位置する。油田は1999年に発見され, 2005年に生産を開始しており, JXは2007年にファームインしている。生産開始以来, 自然減退で生産を継続しているが, これまでの生産挙動から, 水層からの圧力サポートもそれほど大きくないと見込まれており, このまま生産を続けていても, 回収率は低いレベルにとどまると懸念されている。

このような状況下で, オペレーターならびにプロジェクトに参加している各社は, 回収率向上策として, 追加生産井の掘削, ガス圧入, 水圧入, ポンプなどの採用を検討した。また, JXは独自にフルフィールドの油層シミュレーションモデルを構築しており, このモデルによる計算で, JXは油田内の2つの主力油層に水圧入を適用することで, どちらも自然減退に比べて大きく生産量を増やせると評価し, その結果をパートナー各社にも提示している。現在, K2プロジェクトでは水圧入の実施に向け, 必要な設備の検討などのスタディが, 各社共同で進んでいる。

大水深油田では, 高額な開発コストが最大の制約条件となる。大規模な投資となるため, 特に昨今の経済状況では, パートナー間で合意を形成するのに, より多くの議論が必要となっている。また, 2010年に発生したMacondo Prospectにおける原油流出事故により, 同油田の開発もよりシビアな保安対策とそのアセスメントが求められ, 作業日数増加と掘削コスト上昇という形で影響を受けた。加えて, フローラインが低温環境にある大水深油田では, アスファルテンスケールやハイドレート生成による生産障害が発生しやすくなり, それを解消するための作業も大水深故にコストがかかるので, こういった問題を生産障害につなげないような生産管理が重要となる。

一方, アメリカのプロジェクトは, 操業はオペレーターのリードで行われるが, マイナーシェアのノンオペレーターであっても, 意思決定は自社での評価に基づいて行う。したがって, 当社も独自の地質モデル, 油層シミュレーションモデルを構築し, これまでも個々の開発作業の可否を検討すると共に, 自社の評価結果を, パートナー各社にセカンドオピニオンとして提示も行っている。

メキシコ湾の大水深域という, 高いポテンシャルを持ち, 世界でも最先端の技術が使われるエリアでの油田開発に参加することで, その技術やノウハウを吸収しながら, JXは, 今後ともK2油田の開発に貢献して行く所存である。

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