2019 年 84 巻 6 号 p. 425-436
デジタルオイルは,分析データに基づいて作成された複数の代表的な分子によって表現される原油に対する分子モデルである。2014年に京都で開催されたSPE応用技術ワークショップでこの概念を提案し,それ以来,筆者はデジタルオイルの石油工学への利用のための研究開発に取り組んできた。デジタルオイルという概念は石油工学においては,(1)生産活動に伴う貯留層の温度圧力変化に対するアスファルテン沈殿の予測,(2)アスファルテン凝固が引き起こす種々の問題に対する解決法の提案,(3)オイルサンドなどの重質油に対する効率的生産手法の検討への利用が考えられる。本発表ではこれらに関して,筆者のグループがこれまでに行ってきた研究について述べる。また,貯留層内における原油相挙動の予測のための粗視化デジタルオイルモデル作成に関する研究など,現在取り組んでいる研究について紹介する。