石油技術協会誌
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ガスリフトに関する実験的研究
Kiyomitsu FUJII
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1963 年 28 巻 3 号 p. 90-95

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抄録

第1図に示すような装置によりガスリフトに関して研究した。この装置の特色としては,第2図に示すような特殊バルブによりパイプを50cm毎に遮断し,パイプの中の液体とガスの割合を正確に測定できることである。(実験では水と空気を使つた。)第1図においてS/Hをサブマージェンスの比率σとし,%で表す。第3図は注入空気量に対するくみあげた水量の関係を示す。σが大きくなるほどくみあげ能力が大きくなることを示す。第4図は注入空気量に対する空気水比の関係を示す。第5図はサブマージェンスの比率に対するくみあげ水量の関係を示す。第6図は空気の上昇速度と効率の関係を示す。
第7図はパイプの中の空気水比を示す。この図のhはパイプの下端からの任意の高さである。すなわち,この図は水の深さSを基準として,それの何倍の所のガス水比はいくらであるかを示す。これは空気の上昇速度の影響をうけることがわかる。第7図より水の上り得る高さの限度がわかる。これを空気の上昇速度の函数で表わしたものが第8図である。このように水の上る高さに限度があることは,ガスのスリツページが原因である。パイプの中央におけるスリッページを表わしたものが第9図である。ただしスリツページとは(ガスの速度-液体の速度)/(ガスの速度)を百分率で表わす。第10図は空気の速度と摩擦搏失の関係を求めたものであるが,まとまつた形となつていない。これに反し,水の速度と摩擦損失の関係を表した第11図では簡単にまとまつた形になつている。これによればガスリフトにおける摩擦は液体の摩擦と近似的に一致する。このことは第12図の内容からも裏づけされる。これは,元来の水のヘッドSとフローパイプの中の水のヘッドH1の差に対する水の速度の関係を求めたものである。これは非常に簡単な形であり,また水のみの場合と近似的に一致する。
以上を要約すると次のようになる。(1)ガスリフトにおけるガスのスリツページ,摩擦損失およびサブマージェンスの比率が定量的に評価された。(2)スリツページはサブマージェンスの比率が小さくなるほど,またガスの速度が減少するほど大きくなる。(3)ガスリフトにおける摩擦は液体のみの摩擦と似た値となる。(4)ガスリフトにおける液体の上昇速度は直接にサブマージェンスとフローパイプの中の液体との圧力差に影響される。
“ガスリフトにおける流動は液体の圧力差による”という研究はすでに発表された1)2)。これより16年後に実験的にその正しさが証明されたわけである。次にこの実験は東京大学で数年前に行われた。この実験に従事された小池田喜夫氏(現在アラビア石油勤務)に感謝の意を表わす。なお,この実験に使用された特殊バルブは田中科学機器製作株式会社で製作された。

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