石油技術協会誌
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最近発見された2~3の白亜紀油•ガス徴について
長尾 捨一田中 寿雄
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1969 年 34 巻 5 号 p. 240-248

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抄録

北海道における白亜紀層中の油•ガス徴は古くから知られており,その報告や研究もかなりの数にのぼっている。しかしながら,油田•ガス田の見地からのこれらの研究は,最近やつと本格的な研究が始められたばかりである。従来知られている徴候は大別して,宗谷3,天塩5,雨竜3,石狩•空知4,胆振•日高4,根釧5となり,北は宗谷から南は日高まで,白亜系分布地域のほとんどに油•ガス徴が認められる。またこれらを層準的に見れば下部蝦夷層群3,中部蝦夷層群9,上部蝦夷層群6,函淵層群10となる。1968年度には以上のものに追加して,新らしく2つの油徴,4つのガス徴が発見された。油徴は上部蝦夷層群と函淵層群に,ガス徴は上部蝦夷層群1,中部蝦夷層群2,空知層群1である。このうち,空知層群主夕張層の硬質砂岩からのガス徴は,従来確実に把握できなかった空知層群中の徴候として興味あるもので,下部蝦夷層群基底の萠幌砂岩も,貯留岩として考慮される可能性のあることを示している。北海道の下部白亜紀層は空知層群の主夕張層から始まるとされているので,白亜系の全層準に亘って徴候が確認されたことになる。今回発見された白亜系の油はいずれも橙黄色軽質の透明な油で,他の白亜系の油とほとんど同様な性状を示しており,ガス徴のうち,占冠村鬼峠のトンネル内で湧出したものは,ガス爆発事故を起している。現在利用されている白亜系起因の油•ガスは,道東大平洋炭礦のボーリングによる根室層群汐見層からのガスで,5,000m3/dが釧路で都市ガスとして利用されている。これらの白亜系の油•ガス徴の大部分は,地質的にかなり激しい擾乱をうけた地帯にあるので,これが,おとなしい第三紀層下に伏在している地域が,今後の白亜系油•ガス田として探査の対象となるであろう。石狩炭田下への白亜系に対しては多くの人々が興味をもっている。最近この開発を目的とする計画が次第に熟してきているようである。このためには,われわれがなさねばならない数多くの探査があり,それも急速な実施が要望されるのである。

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