石油技術協会誌
Online ISSN : 1881-4131
Print ISSN : 0370-9868
ISSN-L : 0370-9868
釧路炭田地域における亜歴青炭の石炭岩石学的研究について釧路沖における石油探査の基礎データとして
藤井 敬三米谷 宏曽我部 正敏佐々木 実東出 則昭
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 44 巻 3 号 p. 134-143

詳細
抄録

石炭の組織成分は有機物熟成度の評価の指標として用いられてきたが,最近では,石油根源岩中にも含まれ,石油およびガスの生成にも関与しているらしいことがいわれている。ここでは釧路炭田地域をとりあげ,石炭化度と石炭組織成分の化学的性質について検討した。
この結果,釧路炭田地域に賦存する亜歴青炭では,ビトリニットの反射率は約0.55~0.65%であり,スポリニットの螢光波長は約490~520nm,レジニットの螢光波長は約480~520nmであることがわかった。特に,スポリニットの螢光性が石炭化度の指標として有効であることが確められ,またレジニットの螢光性が指標として使えることがわかった。
つぎに,当地域の石炭組織成分はビトリニットが約95%をしめ,そのマセラルはコリニット•テリニットおよびデグラディニットである。デグラディニットは日本炭を特徴づけるマセラルで,コリニット•テリニットに比べ揮発分にとみ,発熱量が高く,水素含有量が多い。また,デグラディニットはコリニット•テリニットに比べノルマルパラフィンの全抽出量も多く,同一の石炭化度でも,ノルマルパラフィンの分布パターン,CPIも異なるようである。デグラディニットの含有量が約30~45%の場合,ノルにマルパラフィンの分布パターンはC29, C31にピークがみられ,CPIは2.3~3.4であるのに対し,コリニット•テリニットではC18, C19にピークがあり,CPIは2.1であった。
このように石炭組織成分により化学的性質がかなり異なり,釧路沖での石油根源岩中にもこのような石炭組織成分が含有されている可能性があるので,石油およびガスの探査に際し,石炭組織成分の化学的•物理的性質にも注意を払う必要があると思われる。
最後に,本研究に使用した試料の採取に際し,太平洋炭鉱株式会社釧路鉱業所の各位のご高配にあずかった。特に,同所の藤野俊郎技師長•伊藤和之計画課長,計画室の佐藤松男氏に深く感謝の意を表する。

著者関連情報
© 石油技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top