石油技術協会誌
Online ISSN : 1881-4131
Print ISSN : 0370-9868
ISSN-L : 0370-9868
西南日本外帯沖の堆積盆地の分布と性格
特に構造発達史について
奥田 義久熊谷 誠玉木 貴裕
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 44 巻 5 号 p. 279-290

詳細
抄録

(1) 漸新世~中新世初期には,瀬戸川帯にみられる厚いフリッシュ型堆積層が堆積し,島弧に平行な堆積盆地が存在したと推定される。
(2) 第1次高千穂変動期に本海域は広域的に陸化したが,中新世初期の後半には田辺•熊野層群に代表されるフリッシュ型堆積層が堆積した。この時期に四国海盆の基盤が形成された。
(3) 中新世中期熊野酸性岩類に代表される深成岩の貫入を伴う構造運動(第2次高千穂変動)があり,本海域は広域に陸化した。大局的に見ると,この時期に現在の深海平坦面に対応する堆積盆地の概形が初生的に形成された。
(4) 中新世後期~鮮新世初期には,海侵(または広域的沈降)により現在の水深1,000m付近にまで海域が広がった。この時代は現在の南海トラフに認められる海溝地形は存在しなかった。
(5) 鮮新世中~後期に入り,現在の下部大陸斜面付近を沈降の中心として撓曲運動による沈降が始まった。このため現在の海岸線よりやや内側にまで海域が広がった。
(6) 更新世初期には撓曲運動のhingeが現在の上部大陸斜面麓付近にまで南進し,一方深海平坦面~南海トラフにおいては全体として撓曲運動による沈降を続けながら,深海平坦面における堆積の中心を北に移動させた。
(7) 更新世末期~現世には南海トラフの沈み込みが始まり,ほぼこの時期か,それよりやや古い時代から四国海盆に堆積した堆積物が押しよせられ,逆断層を伴った押しかぶせ褶曲帯が形成されたと考えられる。この時期から深海平坦面の堆積盆地では,南海トラフに平行な波曲運動から地塊•地溝運動に構造運動様式が変化していったと推定される。

著者関連情報
© 石油技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top