石油技術協会誌
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北東アジアにおけるエネルギー安全保障と多国間協力ウラジミールイワノブ
Vladimir I. Ivanov
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2000 年 65 巻 4 号 p. 320-331

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抄録

北東アジア諸国では,エネルギー需要とそれに伴う輸入増が見込まれる。中国は,現時点でも世界第2のエネルギー消費国であり,日本は北東アジア最大のエネルギー輸入国である。また,日本,韓国および台湾は,主要なLNG輸入国でもある。日本と韓国は,70年代に2度にわたるオイルショックを経験した後,エネルギー安全保障を確保するための主要な手段として,LNGや原子力へのエネルギーシフトを進あてきた。ただ,今日では,この2か国に加えて中国も,サハリンや東シベリアの天然ガスを輸入することによって,供給源の多様化,燃料コストの削減および有害物質の排出削減を進めることを検討している。こうした考えは,国境を超えた大規模なインフラストラクチャーの整備に道を開くものであり,それにより産業需要家と個人消費者のいずれもが大きな便益を得ることができる。
しかしながら,燃料構成の多様化はゆっくりとしたプ.ロセスであり,多額のコストを必要とする天然ガスプロジェクトを実施するためには,パイプライシ整備と上流側のガス田開発,および下流側の供給ネットワーク整備との調整が必要となる。この点で,北東アジア諸国では,まだパイプラインガスの導入や活用の準備ができているとは言えない。さらに,原子力,石炭およびLNGとの競争も厳しい。また,プロジェクトコストの大きさあるいは国内外のさまざまな制約等を考えると,民間セクターが単独でプロジェクトを実施することは考えにくい。したがって,こうした巨大プロジェクトが実現するたあには政府の支援が必要である。
北東アジアにおける天然ガス開発が進展するたあには,エネルギー安全保障,競争促進および環境保護といった課題に対して,各国が単独あるいは二国間の問題として対応するのではなく,関係国が一体となって調整を図りながら対応していく必要がある。

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