宗教と倫理
Online ISSN : 1346-8219
ISSN-L : 1346-8219
不在者の倫理
科学技術に対する宗教倫理的批判のために
小原 克博
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キーワード: 宗教, 倫理, 原発, 未来世代, 科学, 技術
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2016 年 2016 巻 16 号 p. 3-17

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抄録
3.11東日本大震災以降の日本の宗教研究において、宗教と公共性の関係が大きな主題として取りあげられてきた。そこでは主として復興支援における宗教の固有の役割が問われてきたが、同時に、原発に代表される科学技術に対し、宗教が独自の倫理的批判をなし得るのか、という問いも重要な位置を占めた。近代国家における公共性は「現代世代」の「人間」の利益を最大化することを前提とし、科学技術はそのための道具とされてきた。こうした近代的枠組みを批判し、過剰に人間中心的でも、現代世代中心的でもない倫理規範を提示するためには、死者との対話や未来世代への責任意識が欠かせない。これら過去および未来における不在者を記憶・想像することは、現在の存在者である我々に対し、具体的な倫理的責任を喚起させる。本論文では、それを「不在者の倫理」としてとらえ、その基礎付けを行う。それは公共性の中に宗教をいかに位置づけるかではなく、宗教の中に閉じ込められてきた「公共性」を解放する試みとして展開される。その際、宗教一般の可能性を問うだけでなく、キリスト教を事例として取りあげ、科学技術に対する宗教倫理的批判の要点を示す。
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© 2016 宗教倫理学会
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