家族看護学研究
Online ISSN : 2758-8424
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研究報告
高機能自閉スペクトラム症(ASD)の母親とその子どもが「育てられた」「育てる」経験を通して紡ぐ関係性
加藤 まり門間 晶子
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2025 年 30 巻 p. 1-17

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抄録

本研究の目的は,高機能自閉スペクトラム症(ASD)の母親とその子どもの「育てられた」「育てる」経験を通しての互いに「関係を紡ぐ」経験を明らかにし,母親にASDがあるがゆえの子どもと紡ぐ関係の特徴を考察することである.方法は,ASDの母親5名とその子ども2名に半構造化面接を行い,質的帰納的に分析した.その結果,ASDの母親の「育てられた」経験から得た子どもを「育てる」経験は,【親はちゃんとした人に育てようとした】【親に頼りがたい】【手探りで「自分なり」に子育てをする】【親と似た部分もある】の4つのカテゴリ,母親が子どもと「関係を紡ぐ」経験は,【子どもの無関心さや言動に複雑な心情を持つ】【自分の特性で子どもを困らせているかもしれない】【自分の頑なさや苦手さよりも,子どもの心を軽く扱わず接する】【安らぎのある対等な関係で過ごす】【子どもの考えや選択を尊重し,社会の中で歩めるよう支える】の5つのカテゴリにまとめられた.子どもが「育てられた」経験を通してASDの母親と「関係を紡ぐ」経験は,【互いの特徴による困りごとを支えあい心の穏やかさを保つ】【母親や周りに複雑で心許ない思いがわく】の2つのカテゴリにまとめられた.

ASDの母親と子どもが紡ぐ関係の特徴は,互いの生きづらさを思いやり支えあうと同時に,自分の親に対して批判的な気持ちを抱くというアンビヴァレントな複雑さであった.母親と子どもの関係を支援するためには,従来からの支援に加え,親子や親子に関わる人々との対話により,多様な見方と互いに理解を深める支援が必要と考えられた.

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© 2025 一般社団法人日本家族看護学会
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