2024 Volume 2024 Issue 11 Article ID: JRJ20241103
STC報告(4):学生フォーミュラへのJARIの関わり
中谷 有
Tamotsu NAKATANI
学生フォーミュラと一般財団法人日本自動車研究所(JARI)との関わりを紹介する.JARI城里テストセンターでは2017年度から学生フォーミュラに参加する各学生チームへ,練習場所としてテストコースを年に数回提供してきた.2023年度からは学生団体である関東学生フォーミュラ連盟(FM関東)主催による練習会となり,2024年度には20チームが参加するまでの規模となってきている.
1. はじめに
公益社団法人自動車技術会が主催する「 学生フォーミュラ大会(FSAEJ:Formula SAE Japan)」では,学生がチームを組んで小型レーシングカーをゼロから作りあげ,その車の走行性能だけでなく,車両コンセプト・設計・コスト等のものづくりの総合力を競い合います.その過程でさまざまなことを学びます.最近,このFSAEJと一般財団法人日本自動車研究所(JARI)との接点が増えてきました.経緯および概要についてご紹介いたします.
FSAEJ大会はオンラインでの事前審査を経て,これまでは静岡県にある 小笠山総合運動公園エコパにて8月~9月に6日間開催されていました.2024年度からは,開催場所が 愛知県国際展示場に移りました.この大会には国内外多数の学生チームが参加しており,多くの自動車メーカーやサプライヤーが支援しています.
2. JARIによるFSAEJへの関わり
JARI城里テストセンター(STC)では,近隣の大学から利用相談を受け2017年度からFSAEJの練習場所としてテストコースの提供を始めました.当時,関西地域に比べて関東地域では練習できる場所が少なく,実際の走行機会が少ないため,思うように車両改善ができませんでした.その熱い想いに応えるため,STCでは自動車メーカーによるコース利用が少ない「ゴールデンウィーク,盆休み期間,年末年始など」の年3回ほどテストコース提供を実施しました.その結果,練習参加チームの大会での成績は向上しておりました.
表1にSTCにおいて練習利用された学生チーム数を示します.同年度に複数回練習に参加されている学生チームもありますが,以下の表では1チームとしてカウントしています.新型コロナウィルス感染症による活動規制があり2021年度・2022年度はSTCテストコースの利用はありませんでした.2023年度になり活動規制もなくなったタイミングで関東学生フォーミュラ連盟(FM関東)が主催することにより,参加チーム数が11チームに増え,これまでにない大規模練習会となりました.
表1 STCでのFSAEJ練習履歴
3. 2024年度活動状況
引き続き2024年度には,大会本番前の8月に20チーム参加による大規模練習会がSTCにて開催されました.図1に,STC旋回試験場での参加全チームの集合写真を掲載いたします.当日は,JARI研究所長よりJARIステッカーを贈呈しました.
FSAEJ大会では,以下4つの走行が行われます.直線0 m~75 mの加速タイムを競う「アクセレレーション」,8の字コースでのコーナリング性能を評価する「スキッドパット」,直線・ターン・スラローム・シケインなど含まれた周回800 mコースを2周する「オートクロス」,前述周回コースを約20 km分走行する「エンデュランス」です.STCでの練習会では,平坦な舗装面積が広い旋回試験場を利用して,大会で必要となるすべての走行コースを再現し,安全に練習走行をすることができます.
図1 STC旋回試験場での参加全チーム
図2に,9月9日~14日大会当日のJARI出展ブースを示します.大会期間中,多くの学生にブースにお立寄りいただき交流ができました.また,大会の見せ場であるエンデュランス走行では,多くの観客を惹きつけていました.図3のように,最後まで走行することができなかったチームも多数あり,あらためて厳しいレースであることが分かります.
図2 JARI出展ブース
図3 エンデュランス走行の様子
4. 終わりに
大会は9月に終了しましたが,大会で走行した車両を持ち寄り,各チーム車両を乗り比べする練習会がFM関東主催にて10月13日にSTCにて実施されました.14チームが参加しました.以前は,各チームの車両を他チームに見せることは避けていたこともあったようですが,最近はお互い情報交換することで切磋琢磨し,各チーム技術の底上げが図られています.
JARIは,教育活動にも貢献すべく上述のようにFSAEJ活動に協力させていただいております.今後,FSAEJの練習場所としてSTCを利用したことのある学生が自動車業界に仲間入りし,将来,STCを車の開発・研究で活用いただき,そのときに思い出話もできることになるでしょう.