JARI Research Journal
Online ISSN : 2759-4602
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Hiroyuki KOBARImasanori OGURA
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2024 Volume 2024 Issue 6 Article ID: JRJ20240602

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Abstract

一般財団法人日本自動車研究所(JARI)の施設・設備機器について,試験研究を委託する一般企業様や他関連団体様向けに公開する「企業向け見学会」を,2024年4月19日に開催いたしました.今回は「自由見学形式」としましたので,「完全予約制ツアー形式」の前回より1.5倍の多数のご来場をいただきました.また,つくば研究所本館が改修中である事情から,従来とは異なった運営方法を模索しました.その結果,新しい試みにより,見学移動がしやすく,そしてまた市街地コースの見学もできるなど,ご来場者様に便宜を図れたかと思います.今後もさらにより良い見学会の開催を目指しますので,2025年度以降のご参加をお待ちいたします.

1. はじめに

1.1 日本自動車研究所(JARI)の概要

一般財団法人日本自動車研究所(JARI)は,多彩多様な試験のための施設・設備機器を保有し,さらに時代に合わせたアップデートをそれらに行うことにより,自動車分野に限らない幅広い試験研究の受託を可能としております.研究分野は多岐にわたっており,燃費や動力系,電気自動車(EV)・燃料電池自動車(FCV)など環境に関する分野,衝突安全や予防安全に関する分野,そして自動走行,新モビリティに関する分野などです.JARI拠点は,図1のように3カ所あります.主に研究部・管理部門が集結し,「衝突実験場」,「 Jtown注1)」や「 ロボット安全試験センター注2)」を有する「つくば研究所」,高速周回路等の各種テストコースおよびHy-SEF注3) を有する「 城里テストセンター(STC)」,また一部の研究部署と管理部署,JNXセンター,認証センターのある「東京/大門事務所」です.

図1 JARIの拠点(所在地)

1.2 企業向け見学会と経緯について

JARIは中立研究機関として,委託試験研究を官公庁や一般社団法人日本自動車工業会から承る一方で,企業様からも承っております.通常,施設・設備機器は稼働中であることが多いことから,原則として見学は不可となっています.そこで年に一度,試験研究を実際に委託または委託のご検討いただく方々を対象に,施設・設備機器を公開する「企業向け見学会」を開催しております.

この「企業向け見学会」は,2012年からほぼ毎年,一般のお客様向けの「一般公開」と連動して,主につくば研究所で開催してきました.開催時間中,見学者は自由につくば研究所の各施設・設備機器を見学することが可能で,毎回非常にたくさんの来場をいただき好評を得ておりました.

ところが,2019年末からの新型コロナウィルス感染症の影響により,「企業向け見学会」および「一般公開」は2020年以降,中止となっておりました.しかし2023年には先行して「企業向け見学会」のみを4年ぶりに再開し,257名の来場をいただきました1).初めての試みとして,以下の分野ごとの「完全予約制ツアー形式」を採用し,また異なる拠点のSTCも見学対象としました.

a) 電動・電池・水素系の研究棟 ツアー

b) 環境・パワートレイン系の研究棟 ツアー

c) Jtown(特異環境試験場,V2X・多目的市街地)ツアー

d) ロボット安全試験センター ツアー

e) STC ツアー

他に,講演会も企画いたしました.

2. 2024年度の開催について

2.1 開催の概要

2024年4月19日(金) 10:00~16:00で開催いたしました.今年度も「一般公開」はなく「企業向け見学会」のみの単独開催でした.今回の見学対象は,つくば研究所(ただしロボット安全試験センターを除く)のみとしました.概要として,図2の当日マップをご参照ください.

見学形式について,前回はより効率よく説明等を集約し,より質疑応答の時間を設けご来場者様にご理解を深めていただくことなどを目的に「完全予約制のツアー形式」の見学としました.これは一方で,見学人数が絞られてしまう側面もあるため,今回は多くの方にご見学いただけることを主眼に「自由見学形式」としました.

なお2023年9月より1年間の予定で,つくば研究所本館の改修工事がはじまったことより,本館とそれに併設する講堂,ならびに本館前ロータリーが利用できないため,運営方法を見直しました.例年,受付は,広大な構内の南端に位置する本館周辺に設置しています.また休憩場所も講堂に設定しています.したがって,工事のために本館,講堂が使えないことを踏まえ,受付は構内中央の建屋に設置し,休憩場所もそれに隣接する建屋内や臨時のテントにご用意いたしました.その結果,広大な構内でこれら起点が中央になったことから,逆に各見学場所への移動がしやすい形になったかとも思われます.また正門側の本館前ロータリーが使えないことから最寄り駅からのバス送迎をなくした替わりに,駅から歩いて5分の北門からの入場とし,構内の循環バスで受付まで移動いただきました.その結果,従来のままですと,コースの見学はできませんでしたが,今回は構内移動中の循環バスからの市街路コース見学を可能にしました.

他にも例年と違う点として,お弁当をお申込みされた方には,無料でご提供させていただきました.

図2 当日配布のマップより,見学会の概要(位置関係などをご参照のこと)

2.2 見学コンテンツ

以下の9カ所で,設備機器やデモンストレーション,そして展示説明パネルなどを見ていただき,スタッフがご説明いたしました.

表1 見学場所別(図2参照) 見学コンテンツ

見学名称(場所) 内容
Jtown 特異環境試験場 太陽,霧,雨条件のデモンストレーション;1回30分×3回 (図3)
Jtown V2X市街地 自動運転の2つのシナリオのデモンストレーション;1回20分×2回 (図4)
Jtown 多目的市街地 巡回バスの中からコース見学のみ

環境・パワートレイン

(4号エンジン研究棟)

環境型小型シャシダイナモ/MBDシミュレーションデモンストレーション/ RDE展示 / CPXトレーラ展示/パネル展示 等

ブレーキ粉塵ダイナモ

(エンジン研究棟)

ブレーキ摩耗粉塵ダイナモ(2023年度新規導入設備)

モータ評価装置

(電動システム棟)

特殊モータ評価装置大型シールドルーム

電動・電池・水素*

(燃料電池研究棟)

燃料電池蓄電池の性能評価/ 電池安全性試験設備

耐爆火災試験設備などのパネル展示 

城里テストセンター

新モビリティ・機能安全

安全評価・衝突実験

(大型車両実験棟)

城里テストセンター 模型展示による 城里テストセンターの施設・設備紹介
新モビリティ研究部

機能安全 トレーニングコンサルティング

サイバーセキュリティートレーニングの紹介

安全研究部

ペダル操作分析用モックアップ /電動キックボード衝突試験用台車

衝突・衝撃試験設備,安全研究分野概要のパネル展示

ドライビングシミュレータ

(DS棟)

全方位視野ドライビングシミュレータ  

* 電動車両,蓄電池・燃料電池,水素安全などに関する研究

図3 ① Jtown 特異環境試験場 デモンストレーション(霧発生)の様子

  

図4 ② Jtown V2X市街地 デモンストレーション(交差点右折時のシナリオ)の様子

3.おわりに

3.1 開催結果

あいにくの強風がありましたが,晴天に恵まれた中での開催となりました.

(1) ご来場状況

お申込434名に対して,ご来場者様は384名(来場率88%;自由参加制)でした.2023年度ご来場者様257名(来場率96%;完全予約制)の約1.5倍であり,多くの方にご参加いただけました.その多数のご来場により,市街地デモへのバス移動時になどに待機行列ができましたが,大きな混乱もなくスムーズな運営ができました.ご来場者様のご協力のお陰と考えております.

(2) アンケート結果

ご来場者様のアンケートを公式サイトの専用ページより実施し,257名のご回答(回答率67%)をいただきました.ご回答いただけました方には,今回の見学会の展示パネルコンテンツのPDFデータをご提供させていただきました.

良かった見学コンテンツの上位3つは,① Jtown特異環境試験場,⑨ドライビングシミュレータ,⑦電動・電池・水素でした(図5a).また委託試験を検討する際に知りたかった問題や課題について,今回の見学会でどれくらい理解促進が進んだ(できた)のかについては,「まあできた」以上が7割との評価もいただき,ご来場者にはご満足をいただけたかと思われます(図5b).一方で,デモの説明が聞こえにくい,人が多くて見えにくかったなどのご意見もいただいており,次回以降の開催での課題として,さらに検討・配慮してまいります.

a) Q. 見学いただいた装置・施設・デモ等の中で良かったものは何ですか (複数回答有)*上位3つをオレンジで示す

 

b) Q. 今回の見学会に参加して,委託試験等の検討事項や懸念点, 不明点などの問題点は解決できましたか?

図5 アンケート結果(抜粋)

3.2 2025年度以降に向けて

今回の2024年度開催では時間的な制約や,試験設備の稼働状況から残念ながら公開できなかった施設・設備機器が多数あります.今後も,積極的に公開を行い,JARIの試験設備や機器に対するお客様のご理解を深め,一層安心してご利用いただけるよう,企画を検討してまいります.

また今回,つくば研究所本館が改修中である事情から,従来とは異なった運営をせざるを得ず,開催方法を模索しました.その結果,新しい試みにより,見学移動がしやすくなったなど,ご来場者様に便宜を図れたかと思います.さらに,遠方などでお越しになれないお客様に対して,動画配信などによるオンライン参加なども引き続き検討してゆきたいと思います.

今後もさらにより良い見学会の開催を目指しますので,ぜひ,2025年度以降のご参加をお待ちしております.

References
 
© Japan Automobile Research Institute
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