JARI Research Journal
Online ISSN : 2759-4602
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Genya ABEHiroki NAKAMURA
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2025 Volume 2025 Issue 2 Article ID: JRJ20250202

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自動運転の安全性評価シナリオを標準化する目的のISO/TC22/SC33/WG9国際標準化会議(11月6日および7日)のオプショナルツアーとして,国際エキスパートを対象とした一般財団法人日本自動車研究所(JARI)の施設・設備機器の見学会を2024年11月8日に実施した.本稿では,ISO/TC22/SC33/WG9の活動および見学会の概要について報告する.

1. はじめに

1.1 ISO/TC22/SC33/WG9の活動概要

自動運転の安全性評価シナリオを標準化する目的のISO/TC22/SC33/WG9(自動車/ビークルダイナミクス,シャーシコンポーネント,運転自動化システムのテスト/自動運転システムのテストシナリオ:以下WG9と記す)は,2018年に自動運転車のテストシナリオを標準化する目的で設立された1), 2).WG9では,シナリオベースでの自動運転車の安全性評価を行うために ,表1に示した5項目のIS(国際規格)化を進めている3).なお,ここでのシナリオベースとは,自動運転車が遭遇しうる場面(シナリオ)を実際に計測されたデータ,専門家の知識などに基づいて体系的にまとめる手法を指し,それらのシナリオを用いて安全性評価を行うプロセスを標準化することがWG9の活動である3)

表1 WG9の主なワークアイテム(ISO 34501-34505,2025年1月現在)

ISO 34501は用語の定義をまとめたもので,以下に続くISO 34502以降はこのISO 34501で定義された用語を前提として記述される.ISO 34502は安全性評価の枠組みを定義している.ISO 34503はODD(運行設計領域)を定義するための分類方法がまとめられている.ISO 34504 は,シナリオの属性とカテゴリーの分類をするための手法がまとめられている.ISO 34505は,ISO 34502で定義された評価すべきシナリオ(パラメータ空間)から,試験条件を選定するための手法がまとめられる見込みである.なお,2025年1月現在,ISO 34501~34504は発行済み,34505は最終国際規格案であるFDIS(Final Draft International Standard)投票前の審議段階となっている.

1.2 WG9会議の概要

第28回WG9国際標準化会議が,2024年11月6日(水)および7日(木)の2日間の日程で茨城県のつくば研究支援センターにおいて開催された.本会議では,中国(議長国),韓国,英国,ドイツ,イスラエル,カナダおよび日本から参加した12名の国際エキスパートのもと,現在審議中のISO 34505のドラフトおよび本会議において新たに提案された標準化テーマ(AIによる自動運転車の安全性評価手法の構築等)の内容について協議が行われた.なお,ISO34505については,本会議での協議事項を踏まえて,FDIS投票に向けたドラフト作成が進められることとなった.

次回の国際会議は,2025年4月上旬にドイツのベルリンにおいて開催されることが仮決定された.

2. 一般財団法人日本自動車研究所(JARI)見学会の開催について

2.1 開催の概要

本見学会は,前述のWG9国際標準化会議終了後のオプショナルツアーとして(任意参加),2024年11月8日(金)9:00~12:00の日程で開催した.参加者は,中国,韓国,英国,ドイツの国際エキスパート4名であった.本見学会では,JARIにおける自動運転の安全性の評価に関わる研究手法や具体的な研究事例の一端をWG9のメンバーに紹介することを主眼に見学場所の選定を行った.

2.2 見学コンテンツ

本見学会では,以下の3つの施設を紹介した.なお,見学会当日は,晴天に恵まれ,屋外のテストコースの見学を含めて全て予定通り実施した.

表2 見学場所と内容

図1 見学場所の上空写真

自動運転評価拠点Jtown 特異環境試験場は,主に自動運転車に取り付けたカメラや各種センサーを対象として,天候等による周辺認識性能を評価するための施設である.ここでは,試験場の概要および研究事例の紹介に加えて,雨,霧等のデモンストレーションを実施した(図2).雨のデモンストレーションでは,雨量を30 mm/hから80 mm/hに変化させた際の差異について,各国エキスパートが実際に傘を差して体感する機会を設けた.

自動運転評価拠点Jtown V2X市街地は,実際の市街地における交差点等の複雑な交通環境下や通信を活用した環境下での自動運転車の検証を行うことができる施設である.ここでは,自動運転車の概要および研究事例紹介に加えて,自動運転車の試乗を行い,自動運転から手動運転のように,運転の主体が機械から人へ移行する場面の体験企画を開催した(図3).

全方位視野ドライビングシミュレータ(DS)は,自動運転車の安全性評価構築に必要なドライバ運転行動データを取得する施設である.ここでは,DSおよび研究事例の紹介に加えて,DSの試乗を行った.試乗では,全方位視野(水平視野角360度)のメリットを体験するために,安全走行上,周辺の交通状況に対して広く注意を払う必要のある場面の一つとして市街地の交差点を右折する場面を試乗した.加えて,衝突被害軽減ブレーキを模擬する場面の試乗を行った(図4).

   

a ) 降雨時                    

b) 霧発生時

図2 特異環境試験場での見学の様子

図3 V2X市街地での自動運転車の試乗の様子

図4 DS制御室でのDS概要説明および議論の様子

3. おわりに

今回の見学会は,比較的少数の参加人数であったものの,その分各見学箇所における研究紹介や試乗に十分な時間を割くことができた.結果として,各国エキスパートからは,大変な好評を得た.本見学会を通じて,JARIが日本における自動運転の安全性評価に関わる研究拠点の一つであることを広く国外にアピールすることができた.

References
 
© Japan Automobile Research Institute
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