JARI Research Journal
Online ISSN : 2759-4602
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[title in Japanese]
Hiroyuki KOBARIMasanori OGURAYutarou TERATA
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2025 Volume 2025 Issue 6 Article ID: JRJ20250603

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Abstract

一般財団法人日本自動車研究所(JARI)では,企業,関連団体,大学,研究機関を対象に,研究試験設備の公開である「企業向け見学会」を「JARI技術フェア2025」との名称にて今年度も開催いたしました.また地域にお住まいの一般の方々を対象に,JARIについて知っていただく機会である「一般公開」を「JARI OpenDAY<一般公開>」として6年ぶりに開催いたしました.本イベントの開催報告をいたします.

1. はじめに

1.1 日本自動車研究所の概要

一般財団法人日本自動車研究所(JARI)は,自動車に関する多種多様な試験のための施設・設備機器を保有し,環境・エネルギー,衝突安全や予防安全,そして自動走行,新モビリティなど多岐にわたる分野の研究を行っています.さらに時代に合わせたアップデートを行うことにより,自動車分野に限らない幅広い研究試験の受託を可能としております.JARIの拠点は,図1のように3カ所あります.「衝突実験場」や「 Jtown(自動運転評価拠点)注1)」,「 ロボット安全試験センター注2)」などを有する「つくば研究所」, JNXセンター注3)認証センターのある「東京/大門事務所」そして高速周回路等の各種テストコースとHy-SEF注4) を有する「 城里テストセンター(STC)」です.

図1 JARIの拠点(所在地)

1.2 外部向け公開イベントの概要

JARIでは外部の方に向けて,研究試験設備等を公開するイベントを例年開催しております.企業,関連団体,大学,研究機関を対象に,研究試験設備の公開をする「企業向け見学会」および地域貢献として一般の皆さまを対象に,JARIについて知っていただく機会とする「一般公開」です.

新型コロナウィルス感染症の拡大のため,2020年より開催を中止していた公開イベントを2023年より再開いたしました.

2. JARI技術フェア2025

「企業向け見学会」は2年前の2023年に4年ぶりに開催され,以後,毎年開催しております1), 2).本年2025年は,幅広い方々にご来場いただきたい気持ちを込めて「JARI技術フェア2025」と名称を変え,4月18日(金)につくば研究所で開催しました.研究試験設備の公開に加え,委託研究試験に関し担当者と直接相談できる機会を設けました.ご参加希望者に事前にJARI HPからのお申込みをいただく完全予約制といたしました.そしてご希望の方には,お弁当を無料で配布いたしました.ご来場者数は,340名(申込者411名;参加率83%)でした.前年度の2024年度に引き続き,自由見学の形にて各研究分野・センター事業について,映像・パネル展示や設備・実機をご見学いただきました.また大学関係者を対象とした「大学教員・学生ツアー」も開催し,25名(8大学より,教員8名,学生17名)のご参加もいただきました.さらにJARIからの発信として,各研究分野のミニプレゼンを行い,最新情報のご紹介もいたしました(表1).

公開した研究試験設備を図2のMapに示します.開催の様子は,図3の写真をご参照ください.

表1 JARI技術フェア2025でのミニプレゼン プログラム

タイトル キーワード 概要 部署
城里テストコースでの最近の試験利用動向

ADAS

EV

占有利用

試験動向にあわせたテストコース改修計画および利用動向をご紹介 STC
水素・燃料電池自動車安全性評価試験施設(Hy-SEF)のご紹介

FCV, BEV,

水素, 蓄電池

Hy-SEF設備および水素・電池関連の安全性評価試験実施例のご紹介

環境

研究部

交通事故死者数削減のための取り組み(研究活動紹介)

車両安全対策

衝突安全

・安全研究部における研究活動の全体説明

・取り組み事例(電動キックボード衝突試験用台車の開発,他)

安全

研究部

JNXの紹介

・JNX設立経緯概要

・JNXのポジション ・JNXの活用事例

JNX

センター

国のモビリティDX戦略推進に資する取り組み

自動運転車の安全性評価

モデルベース開発 (MBD)

・モビリティDXに関する事業概要の説明

・METI事業SAKURAプロジェクトの紹介

・GI基金NEDO事業「電動車両シミュレーション基盤の構築」の紹介

自動走行研究部
モビリティサービスの研究調査と自動運転の安全設計支援に関する取組み

中山間地域のコミュニティ

RoAD to the L4

機能安全

新モビリティ研究部の主な取組みである

・ 地域モビリティサービスの研究調査

・ RoAD to the L4事業(自動運転の安全設計支援)

・ 機能安全・サイバーセキュリティのトレーニング事業,の紹介

新モビリティ

研究部

図2 公開した研究試験設備(JARI技術フェア2025 MAP)

①-1 環境・パワートレイン分野ブレーキ粉塵試験用ダイナモ

①-2 環境・パワートレイン分野

①-3 環境・パワートレイン分野

②-1 電動・電池・水素分野

②-2 電動・電池・水素分野

③ 自動運転分野ドライビングシミュレータ

④-1 安全分野

④-2 新モビリティ分野

④-3 セキュリティ分野

⑤ 城里テストセンター(STC)

⑥ AD/ADAS HiLS

⑦ メモリアルバンク

⑧-1 ミニプレゼン

⑧-2 ミニプレゼン

休憩所

図3 JARI技術フェア2025 開催当日の様子(図2のMAPの番号(①~⑧)に対応)

3. JARI OpenDAY<一般公開>

「一般公開」は,本年2025年から「JARI OpenDAY<一般公開>」(以降,JARI OpenDAY)と名称を変えて,4月19日(土)につくば研究所にて,6年ぶりに開催いたしました.来場者はおよそ900名でした.アンケートによると,前回(2019年)より,つくば市外からの来場者が増えており,広くJARIを知っていただく良い機会となりました.研究試験設備等の紹介やさまざまな体験企画など,開催の概要を図4の当日Mapで示します.

各研究分野や試験設備等について,一般の方々にも分かりやすい内容でご紹介するとともに,自動運転車両や,電動車両,グリーンスローモビリティ(時速20km未満で公道を走行できる電動の小型車両)の試乗体験を実施しました.衝突試験場の公開の他,高速周回路の一部を残したメモリアルバンクも公開しました.この高速周回路は,JARI前身の財団法人自動車高速試験場時代には,通称「谷田部のコース」と呼ばれており,つくばエクスプレス(TX)開業で,STCに移転するまで,つくば研究所に施設されていたものです.お子様向けの企画としては,くるまの安全教室,クルマにシールを貼る企画,ペーパクラフトなども実施しました.またミニプレゼンもお子様にも楽しんでいただけるような内容にして実施しました(表2).

表2 OpenDAYでのミニプレゼン

タイトル キーワード 概要 部署
秘密のカギってなに?

暗号

多要素認証

・ 暗号とパスワードのしくみ

・ パスワードと認証の関係

・ セキュリティの話

JNX

センター

親子で学ぶ.道路の横断方法.

「ててて!

とまって!」

子どもの心理と交通安全

NHK首都圏作成の「ててて!とまって!」を使って道路の横断方法と,子どもの心理をご紹介します.

自動走行

研究部

電気で走るクルマのおはなし

電気自動車

燃料電池自動車

電池や燃料電池を中心とした電動車両の紹介

環境

研究部

テストコースで行われている秘密の試験 テストコースで行われている秘密の実験を少しだけ紹介.安全と環境への取組みについて一緒に考える STC

さらにJARIの関連団体の皆様からもご協力をいただきました.はたらくくるまの紹介として,つくば市消防局様から消防車両を,東日本電信電話株式会社(NTT)様から災害対策車両を,交通事故分析センター(ITARDA)様から事故調査車両をそれぞれ展示いただきました.ほかにも日本自動車連盟(JAF)様によるシートベルト体験や子供免許証発行なども実施されました.

食事は,グルメストリートと称し,キッチンカーなどに多数出店いただき,美味しいグルメをお楽しみいただきました.また広い敷地内を楽しんで歩いていただけるよう「スタンプラリー」も企画しました.

開催の様子は,図4の写真をご参照ください.

図4 公開した研究試験設備および各種企画(JARI OpenDAY MAP)

① 地球にやさしい車を研究するよ

②でんき自動車の世界(FCミニカー走行体験)

③交通事故から身体をまもるために

④自動運転ってなあに?(ドライビングシミュレータ)

⑤2030年日本のモビリティサービスを考えるよ

⑥城里テストセンターのコースを知ろう

⑦ネットワークウィルスから守って安心!(スタンプラリー)

⑨トヨタミライ・テスラモデルYの同乗体験(電動車両)

⑩-1 衝突実験場公開

⑩-2 衝突実験場公開

⑪グリーンスローモビリティの同乗体験

⑫AD/ADAS HiLS展示

⑬自動運転プリウス試乗

⑭メモリアルバンク

⑮交通事故総合分析センター(ITARDA)様(事故調査車両)

図5-1 JARI OpenDAYの開催当日の様子;個別企画(図4のMAPの番号(①~⑮)に対応)

(A) マイケル★谷田部のくるまの安全教室(車の前のこの子ども達はドライバから全く見えてない!)

(B) JARIが作った電気自動車

(C) どうぶつのシールを貼って【みどりの動物園号】を完成させよう

(E) はたらくくるま(つくば市消防局様;消防車両)

(F) はたらくくるま(NTT様;災害対策車両 等)

(G) シートベルト体験車・子供免許証発行(JAF様)

ミニプレゼン

本物の信号機を使った「信号三兄弟

グルメストリート(キッチンカー等出店)

図5-2 JARI OpenDAYの開催当日の様子;全体企画(図4のMAPの記号(A~G)に対応)

4. おわりに

このたびの外部向け公開イベントは私たちにとって,企業,関連団体,大学,研究機関や地域の皆様と直接触れ合う貴重な機会となりました.特に企業の方には研究試験委託の参考となる情報をダイレクトに提供しつつ,皆様の抱えているお悩みやご希望を知ることができました.一般の皆様には,研究所の活動に対する理解を深めていただくことができました.

今後も,研究試験委託に対してより適切で高水準な研究設備等を提供し,またJARIを理解していただくことで地域への貢献をしつつ地域との連携を推進していく所存です.次回のイベントでも,多くの皆様のご来場を心よりお待ちしております.

謝辞

JARI OpenDAY<一般公開>にてご協力いただきました,つくば市消防局様,東日本電信電話株式会社(NTT)様,交通事故分析センター(ITARDA)様,日本自動車連盟(JAF)様(順不同)には,御礼申し上げます.

References
 
© Japan Automobile Research Institute
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