2014 年 23 巻 1 号 p. 3-14
ゲーミングに関わる研究または実践において,ファシリテータの役割については議論が行われた.プレーヤーに関しては,あたかも,ホモエコノミックスのように,均一プレーヤーが想定されている.ファシリテータに関しては,プレーヤーへの態度や倫理などが議論されてきた.ゲーミングモデルは複合現実から抽象化された構造体である.プレーヤーは,ゲーミングに参加して複合現実を総体認識し,その経験を自己の意思決定行動に反映させる.本稿は,暗黙の理解であったプレーヤー主体ゲーミングから,明示的にプレーヤーモデルの可能性を論議する.複合現実としては,政策科学ゲーミング,都市経営ゲーミング,企業経営ゲーミング,軍事戦略ゲーミングなどで,対象としている具体的問題の解決ないし処置を目指した社会システムの複合現実ゲーミングに限定する.プレーヤーは,それらに関連した現実の問題に取り組むことになる.21世紀に入り,ゲーミングの周辺領域において学術的な革新や社会的な革新が起こっている.たとえば,行動経済学,神経科学,あるいは日々の生活におけるビジネスゲーミフィケーションやソーシャルネットワーキングサービスなどである.第2世代ゲーミングの出現を予期し,ゲーミングの研究開発と実践にプレーヤーモデルの必要性が認識されるであろう.