禁煙科学
Online ISSN : 1883-3926
「社会性」を利用して11人全員が3か月間の禁煙を達成した、職場の禁煙プログラム
吉永 亜子 黒澤 恭子
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2018 年 vol.12 巻 12 号 p. 1-11

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抄録
要 旨
背景:「社会性」を利用した依存症からの脱却に、アルコール依存症者の「断酒例会」の例がある。全日本断酒連盟は、 同会参加で得られる依存の自覚と例会仲間との一体感の2つを、断酒継続の原動力と言う。職域の禁煙支援を「社会性」 に依拠した先例は無かったが、著者らは、禁煙仲間との一体感等の「社会性」が、禁煙継続の原動力になる可能性を考え た。そこで、職域の「社会性」に依拠した多面的な禁煙策を禁煙外来利用と組み合わせ、後者単独より高い禁煙率が得ら れるとの仮説を立て、その検証を本研究の目的とした。
方法: 2014-15 年に社員11 人を対象として3 か月間の禁煙をめざす『チーム禁煙』を実施した。1) 禁煙挑戦者は、社内 でサポーター3 人を依頼したのち、2) 禁煙外来の受診5 回、3) 本人に5,000 円、サポーターに1 人2,000 円の成功褒 賞、4) 後進の禁煙支援に役立てるための経験の語り、の3 つを承諾し、5) 各年、挑戦者5-6 人が「同時期に禁煙」をス タートした。禁煙達成率を外来受診のみによる禁煙率と比較し、「社会性」効果を4) の「語り」に基づいて評価した。
結果:挑戦者11 人が全員3 か月間の禁煙を達成し、その禁煙率100%は禁煙外来受診のみによる禁煙率63.7%より有意 に高かった(p<0.05)。禁煙に役立ったこととして6 人が「同僚と一緒に禁煙し、毎日声を掛け合えた」ことや「仲間が禁 煙を続けているのに自分だけ再喫煙できない」思い等の、「同時期に禁煙」した仲間に関することを挙げ、また5 人が 「支援してもらう以上、再喫煙は自分を許せない」等のサポーターに関することを挙げ、役立った禁煙策の内容や役立ち かたが人により異なっていた。
結論:心の一体感や癒し、ライバル意識や義理堅さ等を役立てられるように職場の「社会性」に依拠した多面的な禁煙策 を準備し、禁煙外来利用と組み合わせたことが、3 か月間の禁煙達成率を高めたと考えられた。
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© 2018 日本禁煙科学会
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