禁煙科学
Online ISSN : 1883-3926
妊婦にバレニクリンを使用した際の胎児への影響と禁煙効果
永井 絵里子 和栗 雅子藤川 郁世小森 桂子大津 由美子藤田 敬子
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2019 年 vol.13 巻 03 号 p. 1-7

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抄録

要 旨
背景:妊娠中の喫煙は胎児に対し、早産、胎児発育遅延、低出生体重、乳幼児突然死症候群などの悪影響を及ぼすため、 禁煙が重要である。禁煙治療には行動療法やニコチン依存症治療薬による薬物療法(ニコチン置換療法、経口禁煙補助薬 による治療)がある。妊婦では、ニコチン置換療法は禁忌であるが、経口禁煙補助薬バレニクリンは有益性投与とされて いる。一般的にバレニクリンによる治療は行動療法単独と比べ有効性は高いことが知られているが、胎児への安全性に関 しては情報が不足している。
目的:大阪母子医療センターのバレニクリンの妊婦への使用状況について検討した。
方法: 2004 年~ 2017 年に大阪母子医療センターの禁煙外来にて母親が2 回以上受診した単胎妊娠56 例(バレニクリン 群(以下、V 群)6 例、行動療法単独群(以下、B 群)50 例)についてカルテより後方視的に調査した。
結果:バレニクリン開始時期は初期が2 例、中期が4 例であった。児の外表奇形など有害事象はみられなかった。低出生 体重児は、V 群2 例(33.3%)、B 群7 例(14.0%)で有意差はみられなかった。早産児は、V 群1 例(16.7%)、B 群1 例 (2.0%)で有意差はみられなかった。禁煙成功例は、V 群5 例(83.3%)、B 群14 例(28.0%)で、有意にV 群の方が多 かった(p = 0.0068)。母体のバレニクリンの副作用は、嘔気3 例、悪夢1 例、動悸1 例であった。
考察:バレニクリン使用により催奇形性や胎児毒性のリスクは高くならない可能性が考えられる。ただし、妊娠初期で使 用していた2 症例は、ほぼall or none の時期の使用であり催奇形性への影響がみられなかった可能性もある。母体の禁 煙については、バレニクリンによる薬物治療を行う方が行動療法単独治療より効果が高いことが示唆された。

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