抄録
はじめに
喫煙対策が遅れていた日本でも、受動喫煙防止を定めた2003年の健康増進法、2005年の世界保健機構(WHO)たばこ規制枠組条約(FCTC)、喫煙関連疾患を扱う9つの医・歯学会が合同で作成「禁煙ガイドライン」と、国ならびに学会の喫煙問題に対する取り組みが本格化した。ついに、2006年からは「喫煙は病気、喫煙者は患者」という考えのもと、医科においては保険適用による禁煙治療が可能になった1)。
喫煙者の多くはまだ喫煙を趣味・嗜好ととらえ、「喫煙は病気」という認識は薄いようである。しかし、喫煙はやめようとしてもやめられない「強い依存症」となり、喫煙者はタバコを吸い続け、心臓病・肺がん・歯周病など様々な病気にかかりやすくなる。つまり、喫煙はう蝕・歯周病・高血圧症・糖尿病などと同じ生活習慣病の一つなのである。喫煙が、口腔疾患の第一のリスクファクターと捉える必要がある2)。
口腔の健康のケアを専門とする歯科医師、歯科衛生士は、患者が歯科診療室に訪れた瞬間から喫煙者であるかどうかが判る。日々の臨床の中で我々は、喫煙による口腔疾患への悪影響と禁煙の効果を直接感じとってきた3)。それゆえ、我々が歯科保健医療専門職である限り、積極的に喫煙対策を推進する役割を担い禁煙支援する力を養っていく必要がある。