抄録
要 旨
背景・目的:わが国における肝疾患の死亡順位は9位である。喫煙習慣はが、肝疾患のリスクであるが、禁煙者の肝機能
検査の経年変化は明らかにされていない。
方法:職域男性の定期健康診断の結果を用いて、禁煙後10年間の経年的な肝機能(AST、ALT、γGTP)の変化を調査し
た。
結果:禁煙群のAST、ALTのベースラインと比較し、1年目から10年目まで低値を示したが、有意な差はみられなかった。
禁煙群のγGTPは、ベースラインと比較し1年目から10年目まで1.0~6.0 mg/dlと高値を示したが、有意な差はみられな
かった。一方喫煙群のASTは、2年目から10年目まで増加し、有意な差がみられた。ALTは、ベースラインに比較し1年目
から3年目まで低値を示したが、ベースラインと比較し4年目、5年目、6年目に有意な増加を示した。γGTPは1年目
から10年目のどの年もベースラインと比較し有意な差がみられた。
結論:禁煙群のASTとALTは禁煙後早期に改善し、さらにそれが長期に維持される傾向にあり、禁煙は肝機能の改善に寄与
することが示唆された。一方喫煙群のASTは2年目から10年目に、ALTは4、5、8年目に、γGTPは1年目から10年目に
悪化傾向を示した。タバコの有害物質を解毒する肝臓の負担は大きいと考えられ、肝臓の保護のためにも禁煙が重要であ
ることが伺えた。