抄録
本研究は、技術習得を目標とする看護学演習における教員の行動を表す概念を創出し、その教授活動の特徴を明らかにすることを目的とした。研究方法論には看護概念創出法を適用し、参加観察法(非参加型)を用いて、演習中の教員・学生間および教員間の相互行為場面をデータとして収集した。持続比較分析の結果は、演習を展開する教員の行動が10概念【授業形態・教授技術の組織化と転換】【準備状態査定による授業進行中断・再開とその反復】【時間外授業展開のための環境確保】【解説・演示による指導計画推進とその修正・発展】【教員間の教授内容補正による目標達成度の均衡化】【授業過程円滑化のための学生協力受理と教員間協同】【目標達成度・学習態度の評価と伝達】【学生状況観察による問題の発見と是正】【学生要望への対応とその保留】【模擬状況から現実への接近に向けた臨場感の演出】を用いて説明できることを明らかにした。考察の結果は、看護学演習を展開する教員が、1)各技術に対する深い理解を前提として時間外の指導も含めた綿密な授業案を作成し、多様な授業形態・教授技術を駆使する、2)授業過程を通し、作成した授業案の形成的評価を行い、その結果に基づき柔軟に計画を変更する、3)学生と円滑な相互行為を展開し、演習中に生じる多様な問題や要望に対応する、4)実践経験を活用し、学生のレディネスに応じて状況を設定、看護実践の場を想定できる必要性を示唆した。