2019 年 28 巻 1 号 p. 1-16
研究目的は、学生が看護師による看護学実習指導の良否を決定づける基準を解明し、その特徴を考察して看護師が学生にとってより良い指導を実現するための示唆を得ることである。看護基礎教育課程に在籍する学生864名を対象とし、学生が「良い」、「良くない」と知覚する看護師の指導を問う自由回答式質問を含む質問紙を用いて調査した。質問紙の内容的妥当性は2回のパイロットスタディにより確保した。分析には、Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いた。回収できた質問紙531部(回収率61.5%)のうち、有効回答515部を分析対象とした。分析の結果、学生が看護師による看護学実習指導の良否を決定づける基準を表す46カテゴリが明らかになった。Scott, W. A. の式によるカテゴリ分類への一致率は70%以上であり、カテゴリが信頼性を確保していることを示した。結果は、学生が、看護師による指導の良否を①実習目標達成に直結する指導に関する基準、②円滑な実習進行に向けた支援に関する基準、③学習環境の確保と整備に関する基準、④指導に伴う看護師自身の態度や行動に関する基準の4側面から決定づけていることを示した。看護師は、実習目標達成を最優先すると共に、これらの特徴を考慮した指導を提供することにより、学生により良い指導を実現できる可能性が高い。