スポーツ精神医学
Online ISSN : 2436-1135
Print ISSN : 1349-4929
原著
統合失調症の首尾一貫感覚と運動習慣および精神健康度に関する研究
萩原 遥奥平 智之若槻 晶子安藝 竜彦芝 恵美子根本 安人大賀 健太郎二木 貴史葛西 正文山口 聖子矢久保 修嗣
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 11 巻 p. 33-38

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抄録

ストレスに対して脆弱であると言われる精神障害者が地域社会で生きていくために、ストレスに対処できる能力を持つことは重要と考えられる。ストレス対処能力を測る概念として、首尾一貫感覚(Sense of Coherence: SOC)が挙げられる。本研究では、精神科デイケアを利用する統合失調症者のSOCと関連する要因について検討した。統合失調症のデイケア利用者56名(男性34名、女性22名)に対し自記式質問紙調査をおこない、日本語版SOCスケール、運動や健康習慣(Health Practice Index:HPI)、精神健康度(General Health Questionnaire:GHQ)などとの関連を調べた。参加者のSOC得点の平均は52.14±10.68で、過去の調査における健常者の平均値より低かった。GHQ-12陰性群(4点以下)の方が陽性群(5点以上)よりSOC得点が有意に高かった。運動プログラム参加群の方が不参加群よりSOC得点が高い傾向がみられた。また、肥満群(BMI≧25)の方が非肥満群(BMI<25)より全体の機能性評価(Global Assessment of Functioning : GAF)得点が有意に低く、HPI得点が有意に低かった。結果から、① 精神健康度が高いほどストレス対処能力が高い、② 運動プログラムに参加しているとストレス対処能力が高い、③ 肥満であると心理社会職業的機能が低く、生活習慣が健康的でないことが示唆された。SOCに関する介入研究を含めたさらなる検討が必要であると思われる。

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© 2014 日本スポーツ精神医学会
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