2006 年 10 巻 p. 112-127
ミュージックビデオ(MV)は、1980年代以降日本でも広く受容されるようになったが、特に1980年代半ばの日本におけるMV受容の拡大に極めて大きな役割を果たしたのが、MVを紹介するテレビ音楽番組と、ビデオを用いてそれを録画しコレクションしようとするマニアの存在であった。こうしたマニアの出現には1950年代末から続くFM放送受容の流れがあり、MV番組の生成プロセスとは、こうしたポリティクスの中で、それまでとは異なった形のテレビ音楽番組が生成されていくプロセスであった。本論は、こうしたマニアという場とビデオというメディア・テクノロジーとのかかわりが、いかにMVを受容する場を形成していったのかを明らかにするものである。