2006 年 10 巻 p. 40-57
本稿は20世紀中葉を代表する2人のアフリカ系アメリカ人の演説の音楽的分析である。より先行する世代の説教師CLフランクリンの説教は、興奮してくるにつれ、ブルース的な音階をなぞる様を呈したが、この種の「黒人音楽」的特徴を、M.L.キングJr.とマルコムXが、どのように保持または逸脱しているかを調査し、可能な範囲で記譜を試みた。その結果、前者ではピッチの上昇によって漸次的に感情を盛り上げていく手法が明らかであり、後者では一定のテンポとピッチで矢継ぎ早に発し続けるアタックの強い音節が、時にシャッフル・ビートに漸近しながら、スウィングに似た刺激をもたらしていることが理解された。