抄録
本研究は,不登校経験家族(子・母・父)を事例とし,従来の「単方向TEA」を応用して複眼的視点から相互のやり取りをプロセスで記述する分析手法「双方向TEA」の開発を試みたものである。具体的には,3者それぞれのTEM/TLMG図を作成し,それらを重ね合わせ,全体像を示す双方向TEA図と家族システムを示す双方向TEM/TLMG図の作成を試みた。可視化には,受信と発信という双方向な相互作用を示す双方向SDと双方向SGという新たな概念と記述方法を提示した。分析の結果,家族システムの変容が6つの時期区分(第1期:異物としての不登校未満,第2期:排除したいができない不登校,第3期:扱わない不登校,第4期:新しい一体感という不登校の恩恵,第5期:扱える不登校,第6期:不登校を取り込んだ日常)として示された。双方向TEAという分析手法は,心理臨床実践におけるナラティヴ・セラピーへの応用として多様な支援策を模索する支援者を中心に有用ではないかと結論づけた。