抄録
フラグメント分子軌道(fragment molecular orbital; FMO)法は、近年巨大分子系の電子状態計算手法として、注目を集めている。FMO法の特徴として、系を分割したフラグメント間の相互作用エネルギーinter fragment interaction energy (IFIE)が計算でき、応用上IFIEが極めて有用であることが示されている。しかしながら、共有結合しているフラグメント間のIFIEが非常に大きな値(約-15.2 hartree)取るため、共有結合しているフラグメント間(1-2)のIFIE解析を妨げる大きな原因となっている。そこで、この問題を解決するための補正方法として仮想的なフラグメントの解離過程を想定したヘテロ解離補正(J. Comput. Aided Chem. 18, 143 (2017))を提案した。しかしながら、C-C共有結合は、ラジカル開裂することが知られており、さらなる補正方法の改良が必要とされていた。そこで本研究では、前回提案したヘテロ開裂補正法に追加する形で、ラジカル開裂補正法を提案し、検討を行った。