2023 年 23 巻 p. 35-42
エポキシ樹脂は、塗料や接着剤などとして用いられる機能性材料の一つである。樹脂合成に用いられる硬化剤は、反応性や物性特性の面で樹脂に大きな影響を与えるため、硬化剤の選択は非常に重要である。硬化剤を様々に変化させて硬化反応を行う場合、反応温度や硬化物の硬度などを実験的に調査することができるが、反応の基盤となる反応機構を明らかにすることは難しい。本研究では、密度汎関数理論計算を用いてイミダゾールを硬化剤として用いたエポキシ-イミダゾール樹脂の硬化反応の反応機構の解析を行った。計算結果より、エポキシ-イミダゾールの硬化反応は、反応基質および反応途中で形成されるイミダゾール類が求核種となって、五段階の反応経路により進行することがわかった。本反応の活性種はイミダゾールアニオンであり、これを発生させることで、活性化自由エネルギーの低いエポキシドの開環反応が繰り返し進行することが明らかとなった。