日本における情報化学研究の傾向と特徴を明らかにするために、情報化学討論会における発表記事の主題と著者所属機関を計量情報学的に分析した。25回中11回の討論会に発表された539記事にキーワードを付与し、その主題カテゴリー別の出現率の推移を調べるとともに、Journal of Chemical Information and Computer Sciences 掲載記事(全記事及びその中の日本人著者による記事)における出現率と比較した。初期の頃主流であった化学情報学に代わって量子化学計算や分子モデリングの発展が著しいこと、その中でも蛋白質や無機化合物への応用が目立つこと、日本では特に化学反応への関心が高いこと等が明らかになった。次に、第25回までの全討論会の1259記事における著者所属機関のデータを分析した。全期間にわたって大学等が60%前後の寄与を維持している。企業の寄与は1990年頃をピークに減少し、代わりに国の研究所等の寄与が増えている。共同研究も大学を核としたものが多い。共著機関数の分布は、全期間を通して驚くほど安定しており、シフト型負の二項分布によく適合する。主な発表機関の主題カテゴリーデータによる主成分分析から、主要な研究テーマ軸を解釈し、これらの機関を研究テーマの特徴からグループ化した。