Journal of Computer Aided Chemistry
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アルキル亜鉛‐ビスオキサゾリン錯体触媒を用いたN-置換マレイミド不斉重合の開始反応に関する理論的研究
大野 英俊吉村 和明堀 憲次
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2003 年 4 巻 p. 52-59

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抄録

光学活性ビスオキサゾリンとアルキル亜鉛より調製した不斉触媒を用いて、N-置換マレイミドを重合すると、光学活性ポリマーが生成することが知られている。本研究では密度汎関数法(DFT)計算を行い、この不斉アニオン重合の開始反応機構の検討を行った。その結果、Zn原子は空の配位座を持たないため、マレイミドは不斉触媒に配位することなく反応は進行することが明らかとなった。この時、アルキルアニオンはSN2類似の機構でマレイミド二重結合へ移動するが、この機構は以前に検討した類似反応の機構、あるいはメタロセン触媒の関与する触媒反応の機構とは根本的に異なる。不斉配位子上の置換基及びマレイミドのN-置換基は遷移状態の構造を大きく変化させず、また活性化エネルギーにも大きな影響を与えないと計算された。したがって、開始反応において不斉は誘起されないと考えられる。開始反応後、マレイミドカルボアニオンはアルキルアニオンが移動した不斉触媒とエノラート酸素で配位した錯体を形成し、これを反応物として成長反応は進行していくことが判明した。

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© 2003 日本化学会
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