日本冠疾患学会雑誌
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原著
冠動脈バイパスにおけるグラフト流量波形分析に関する実験的検討
髙森 達也折目 由紀彦中田 金一塩野 元美古場 隼人
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2012 年 18 巻 1 号 p. 12-20

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抄録
【目的】CABGのグラフト流量波形上の逆流成分(R)の全流量波形成分(T)に対する割合R/Tがグラフト機能を反映しうるかを検討した.【対象と方法】豚(7頭)を用い,LAD#7にLITAを端側吻合した.TTFMをLAD#6,LAD#8,LITAに装着しLAD#6とLITA吻合部に血管狭窄器を装着した.LAD#6の狭窄率を変化させ,各流量波形を分析した.LAD#6の血流量減少率を75%に固定し,吻合部の狭窄率を変化させ,流量波形を分析した.【結果および考案】LADの血流量減少率が0%でバイパス吻合した場合,LITAのR/Tの大きさはLADとLITAの間の血流競合の程度を反映し,吻合部末梢への流量は低下し,グラフト機能障害が示唆された.LAD中枢の血流減少率が75%以上で,R/Tは減少し,充分なグラフト流量が得られた.つまり血流減少率75%以上であれば,CABGにて,冠動脈の血流改善を期待できると考えられた.LITAの吻合部狭窄の程度が増加すると,LITAのR/Tは増加し,冠動脈末梢の血流量は減少し,吻合部狭窄によるグラフト機能障害を示唆した.【結語】CABG術中グラフト血流評価において,LITAのR/Tは血液供給管としてのグラフト機能を推定する信頼できる定量的な指標の一つとして有用であると考えられた.
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© 2012 日本冠疾患学会
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