2014 年 20 巻 1 号 p. 42-45
救急隊は傷病者を短い時間しか観察できず,また既往症のない傷病者や自覚症状のない高齢者などでは主な訴えもないため,病態を見極めるのは非常に困難である.本研究では,大阪市の救急活動データから,搬送した傷病者の胸痛などの訴えについて分析した.胸痛のある循環器疾患傷病者(心筋梗塞)の入院率(84.1%)は,胸痛なしの循環器疾患傷病者(76.7%)よりも高かった.しかし傷病程度では,胸痛のない循環器疾患傷病者(心筋梗塞)の重症割合(12.7%)は,胸痛ありの循環器疾患傷病者(2.8%)よりも高かった.循環器疾患傷病者の救急搬送時において傷病者の訴える胸痛などを詳細に聴取し,他の所見と組み合わせることで適切な病院搬送へ役立つと考える.