抄録
冠動脈瘤は正常冠動脈径の1.5 倍以上の局所的な拡張と定義される.また比較的稀な病態であり,冠動脈造影検査施行例の0.3~4.9%の頻度で報告されている.部位別には右冠動脈に最も多く,左冠動脈前下行枝,左冠動脈回旋枝,左冠動脈主幹部の順に多いとされる.冠動脈瘤の原因は主に動脈硬化性とされ,その他に外傷,川崎病,血管炎,結合組織病,先天性,感染性,医原性があげられる.冠動脈瘤の多くが無症状であり,その自然歴や予後は依然不明であるが,心筋梗塞などの瘤内血栓形成に伴う血栓塞栓合併症および稀ではあるが瘤破裂の危険性が臨床上問題となる.冠動脈瘤の治療に関しては一定のガイドラインは存在しないが,冠動脈瘤の治療目的は血栓塞栓合併症の予防と瘤破裂の予防にある.今回2005 年4 月から2011 年3月までの6 年間に当科で手術を施行した冠動脈瘤4 例の臨床像を検討した.