抄録
急性心筋梗塞の死亡率は,近年のPCI治療の進歩や薬物療法の標準化により著しく低下し,約 6 %といわれている.しかし,心不全を合併した場合の予後 はいまだ不良である.近年,心不全治療における非薬物治療としてASV (adaptive servo-ventilation) が注目されている.非代償性心不全において,ASVによる陽圧呼吸は,前負荷軽減作用はもちろんのこと,酸素化およ び呼吸筋疲労を改善させる.また,適切かつ規則正しい呼吸リズムを保つことで,肺の伸展受容器を介した副交感神経刺激ならびに相対的な交感神経活動の抑制 により,血管拡張作用および抗不整脈抑制作用が期待できる.心不全を併発した急性心筋梗塞患者に対してASVを使用することで,予後の改善や心血管イベント発症の抑制が期待されるが,そのためにはASVのメカニズムをよく熟知し,適応・タイミング・継続の必要性を検討する必要がある.