抄録
患者は68歳男性.2006年11月に急性心筋梗塞を発症し,左冠動脈回旋枝に対し経皮的冠状動脈インターベンションを行った.2007年1月に心室頻拍に対し,植え込み式除細動器 (ICD) を留置した.CT検査で左心室瘤を認め, 32 mm × 45 mmに拡大していたが,患者自身が手術を拒んでいた.2016年2月にICD感染を発症し経皮的摘出を試みたが,心室リードが心腔内に残存した.リード心腔内残存および左心室瘤に対し手術を行う方針とした.術前,重症大動脈弁閉鎖不全症を認めた.左室形成術 (ELIET),大動脈弁置換術,ICDリード抜去を行い,術中に三尖弁腱索断裂を認め三尖弁形成術も行った.左心室瘤は嚢状瘤であり,病理検査で瘤壁に心筋組織が残存していたため偽性仮性左心室瘤と診断した.術後経過に問題なく第13病日に自宅退院した.ELIET法により左室は円錐形に形成され,左室球形化を防ぐことができた.また,適切な容積縮小を行うことで,術後心機能改善を得た.