抄録
水稲の乳苗移植栽培は、育苗の効率化・省力化を可能にするとともに、従来の稚苗移植栽培と同レベルあるいはそれ以上の収量を実現できる技術として期待されている。乳苗移植栽培では苗の根の生育が一つの重要なポイントとなるため、育苗期間中から移植直後にかけての研究がすでにかなり行なわれているが、本田における根系形成についての報告は、まだ非常に少ない。そこで、著者らは実際に乳苗移植栽培を試みている農家にご協力を頂いて、本田における根系調査を行なっている。1年目の結果についてはすでに一部分を報告した(森田ら, 1995, 1996)が、出穂期における根系形態の特徴が、(1)生育をおってどのように形成されてくるのか、(2)移植時の植付苗数と関係しているのかという点についてさらに検討を続けた。すなわち、(1)については出穂期のデータと対応している1995年の材料について、また、(2)については稚苗の植付苗数を変えた処理区を設けた1996年の材料についてそれぞれ解析を行なった。