抄録
本研究は、認知症高齢者を介護する家族主介護者を対象に、続柄別のエンパワーメントの特性を明らかにすることを目的とした。エンパワーメントの測定は質問紙尺度であるエンパワーメント評価尺度(Empowerment Assessment Scale for Principal Family Caregivers of Persons with Dementia:以下、EASFCD)を用いた。EASFCDは【因子1:介護の否定的感情】【因子2:介護の知識・技術に関する自己効力感】【因子3:介護に対する意識・結果・期待】【因子4:介護への肯定的感情評価尺度】【因子5:被介護者との関係性】【因子6:相談相手の有無と情動的サポート】の6因子から構成され、点数が高いほどエンパワー状態であること示す。計160名にEASFCDを含む質問紙を配布した結果、回収数は115名(回収率71.9%)であり、欠損値がない108名が分析対象となった(有効回答率67.5%)。EASFCDでは、嫁の総得点が最も低く(総得点:他続柄>嫁、p<0.05)、全ての続柄に比べてパワーレスネスな状態であることが示唆された。特に夫や妻と比較した場合、介護の否定的感情が強く(因子1得点:夫>嫁、p<0.01)、介護に対する意識も低かった(因子3得点:妻>嫁、p<0.01)。また、家族主介護者と被介護者の年齢を調整した場合には、嫁と娘以外の続柄間で有意差はみられなくなった。このことから、エンパワーメントは年齢の影響を受ける可能性があることが示唆された。