抄録
極低出生体重児では出生時のリンの貯蔵量が少ないため,少なくとも経腸栄養が確立するまでは,静脈的なリンの補正を必要とする。従来,新生児に対するリンの補正は,リン酸二カリウム補正液を用いて行われていた。しかし,リン酸二カリウム補正液はカリウムを含むため,容易に高カリウム血症を起こす新生児,特に極低出生体重児では使用することで,高カリウム血症による不整脈や突然の心停止のリスクが臨床上問題となっており,リンの補正に制限と限界があった。しかし,2011年からリン酸ナトリウム補正液が承認され,極低出生体重児に対して早期からのリンの補正が可能となった。そこで今回われわれは,リン酸ナトリウム補正液の導入によるリンの補正の効果について検討した。対象は2008~2013年の6年間に当院NICUに入院し,生存退院できた極低出生体重児179名である。当院では2011年7月にリン酸二カリウム補正液からリン酸ナトリウム補正液へ変更となった。2008年1月1日~2011年6月30日までに入院した前述対象児94名を「リン酸二カリウム補正液群(K群)」,2011年7月1日~2013年12月31日までの対象児85名を「リン酸ナトリウム補正液群(Na群)」とし,調査期間は日齢0~14とし,後方視的に比較検討した。二群間比較では,「Na群」が,日齢1~7までの1日総リン投与量および1日平均総リン投与量(K群:39mg/kg/day vs Na群:42.5mg/kg/day)において有意に多く,日齢3~7までの血清リン値および最低血清リン値(K群:3.1mg/dL vs Na群:3.5mg/dL)が有意に高く,血清リン値で4mg/dL未満を認めた児(K群:78% vs Na群:65%)が有意に少なかった。また,経静脈的リン投与開始日齢(K群:日齢3 vs Na群:日齢2),経静脈的リン投与日数(K群:6日 vs Na群:9日),累積経静脈的リン投与量(K群:101mg/kg vs Na群:181mg/kg),累積総リン投与量(K群:542mg/kg vs Na群:595mg/kg)もいずれも有意差を認めた。以上の結果から,リン酸ナトリウム補正液の導入はリンを早期から必要量に投与することが可能であり,極低出生体重児の生後早期における低リン血症の補正に寄与すると考えられた。