抄録
近年,小児に対する医薬品の適応外使用問題への関心が高まり,適正な小児の薬物療法を確立することは医療における重要な課題となってきた。そこで,国内の小児用医薬品開発の現状と欧州の法制化前後の状況を分析し,本邦における小児用医薬品開発推進に向けた具体的な方策について検討した。2010年4月から2015年3月までの5年間に新薬として承認された医薬品の件数は629件あり,うち小児に対する用法・用量が記載された医薬品は190件で全体の30.2%であった。一方,小児医薬品開発に関する法整備がなされ実施された欧州では,2007年から新規に開発される医薬品の70%に対し小児を対象とした臨床試験の要請がなされ,法制化前は小児適応を有する医薬品が34%であった状況と比較すると大きな効果があったことが報告された。以上より,本邦において小児医薬品開発を進めるには欧米と同様の法整備が必要で,とりわけ,1)小児用医薬品開発の奨励と小児を対象とした臨床試験の要請(義務化),2)小児に必要な医薬品を検討し開発を助言できる公的組織の設立,3)企業にとってのインセンティブは重要な点と考えられた。これらがすべて整った時に,本邦の小児医薬品開発が欧米並みに進むと期待される。