抄録
Indomethacinは新生児の未熟児動脈管開存症に対して使用されている治療薬であり,human serum albumin(HSA)からbilirubin(BR)を遊離(displacement)させてunbound bilirubin(UB)を上昇させる作用(BRD作用)を認める事が知られている。しかしながら,臨床的な用法・用量におけるBRD作用の有無についての評価は一定していない。以前に我々は,acetaminophenがglucose oxidase-pero-xidase法(GOP法)における反応促進物質であるため見かけ上BRD作用が高くなることを報告した。今回我々は,同様の方法である赤血球膜吸着ビリルビン(E-B)測定法とGOP法を組み合わせた測定系によりindomethacinがGOP法における反応促進物質で無いことを確認し,更にGOP法により有効血中濃度域(低濃度域)及び高濃度域におけるBRD作用を検討した。洗浄濃厚赤血球とBR-HSA溶液(BR: HSAモル比1.5)を混合し,sulfisoxazole(SI)及びindomethachin(IDM)を0~5mMになるように添加した。遠心後の上清のtotal bilirubin(TB)とUBをGOP法にてUB-analyzar(UA-2)で測定した。その後赤血球層を洗浄しHSAと混合し遠心後の上清を高速液体クロマトグラフィーで測定しHt(ヘマトクリット)で補正しE-B値とした。BR-HSA溶液(BR:HSAモル比0.6)を作成しsulfisoxazloe及びindomethacinを0~0.5mM(有効血中濃度域を含む)になるよう添加しUB-analyzarにて測定した。SIの添加により,GOP法及びE-B測定法において全ての濃度でUB上昇,TB低下及びE-B上昇を認めた。IDMの添加により,GOP法及びE-B測定法において低濃度域(0~0.5mM)では殆ど変化を認めなかったが,高濃度域ではUB上昇,TB低下及びE-B上昇を認めた。IDMの有効血中濃度は0.5μMであり,近藤らによるとIDMを0.2mg/kg静脈投与10分後の平均血中濃度は2.9μMである。それらを含む低濃度域においてBRD作用を認めなかったが,有効血中濃度をはるかに越える1mM以上ではBRD作用を認めた。以上より,GOP法と同じ結果がE-B測定法により得られたため,IDMはGOP法における反応促進物質では無い。よってIDMのBRD作用の評価にはGOP法を用いることが可能である。GOP法での検討の結果,臨床での有効血中濃度域(0.5μM)ではBRD作用は認めず,1mM以上ではBRD作用を認めた。この理由は,高濃度域でIDM結合によりアルブミンの構造が変化しその結果BRD作用が発現するためと考えられた。ゆえに,IDMは真のBRD作用を認めるが,早産児での動脈管開存症の治療での用法・用量では黄疸児に対して安全に使用できると考えられた。