日本歯内療法学会雑誌
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総説
歯の保存を困難にする穿孔について 第1部:穿孔の発生原因と診断,予防・予後や拡大鏡の有効性に関して
石崎 秀隆杉本 浩司山田 志津香吉村 篤利
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2022 年 43 巻 2 号 p. 82-91

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抄録

抄 録:穿孔は根管系と歯周組織系が交通してしまうことであり,根管治療失敗の要因の一つとなっている.穿孔はカリエスや外部性・内部性歯根吸収などに伴って起こる場合や,髄腔開拡や根管拡大時などの歯科治療時に偶発的に起こる場合がある.また穿孔してしまった時や再治療時に穿孔していた場合などは封鎖の前にその位置と大きさを正しく把握することが重要である.

 本総説では歯の予後を不良にしている穿孔に関して第1部と第2部に分け,第1部では主に医原性の穿孔に関して,いつ穿孔が起こるリスクがあるのか,穿孔の診断,穿孔治療におけるマイクロスコープやルーペなどの有効性,穿孔の予防・予後について,第2部では実際の症例報告を基にどのような症例報告が行われているのか,また各穿孔部位における治療法を考察した.

 穿孔の原因について,穿孔は髄腔開拡時,根管拡大時,ポストコア形成時,ポストコア除去時,ガッタパーチャ除去時などに起こっていることが考えられた.穿孔の診断では視診などの口腔内診査だけではなく口腔内エックス線写真,ペーパーポイントを用いた方法,根管長測定器を用いた方法やコーンビームCTを用いた方法が有効と考えられた.

 穿孔歯の予後は以前に比べ良好な経過が報告されているが,依然として根管治療不良の原因となっている.穿孔しないために適切に予防対策をとり,穿孔してしまった場合には少しでも早く適切な処置を行うことで良好な経過が期待できる.

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© 2022 一般社団法人 日本歯内療法学会
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