抄録
『蓮華部心念誦儀軌』は唐代中国に伝わった金剛界法の基本儀軌である。不空訳あるいは不空作と伝えられ、通常知られているのは一巻本 (大正八七三番) である。しかしこれとは別に二巻本も存在する。二巻本は一巻本と内容が少し異なるが、その本文はこれまでまったく公開されてこなかった。そのため、一巻本との違いについては、先徳の記述に頼らざるをえなかった。幸い入唐八家の一人である禅林寺宗叡 (八〇九-八八四) によって将来された二巻本が、京都東寺観智院に伝わることを教わり、ここに本文を翻刻し、密教研究の一資料として多くの研究者に提供することにした。本稿はその後編である。