日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌
Online ISSN : 2189-7085
Print ISSN : 1882-0123
症例
天日干し後の着用で発症したブラジャー肩紐中のDi (2-ethylhexyl) maleateによる接触皮膚炎
今村 真也足立 厚子白井 成鎬井上 友介森 あゆみ石井 恭子佐々木 和実
著者情報
ジャーナル 認証あり

2017 年 11 巻 1 号 p. 55-63

詳細
抄録

 購入して2日間着用時には無症状であったのに, 天日干し後に着用したブラジャー肩紐に一致して接触皮膚炎を起こした60歳女性を経験した。肩紐のパッチテストが陽性を示したため成分分析を行い, 被疑物質で皮膚テストを施行した。検出された Di (2-ethylhexyl) fumarate (DEHF : trans体) は陰性であったが, DEHFの cis 異性体である Di (2-ethylhexyl) maleate (DEHM) と, 実験室にてDEHFに紫外線照射をした産物もパッチテスト陽性を示した。Trans 体のDEHFに実験室において紫外線を照射すると, cis 体のDEHMが生成されることが実証され, これが患者にとってのアレルゲンと考えられた。ブラジャーの肩紐からは検出せず, 既往の塩化ビニル手袋皮膚炎由来と考えられたMono (2-ethylhexyl) maleate もパッチテスト陽性を示し, 類似物質のパッチテストの結果も併せて, 自験例のDEHMに対する反応は, 2-エチルヘキシル基, cis 二重結合, カルボキシル基という3つをそろえていないと抗原として認識されないことがわかった。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
前の記事
feedback
Top