2017 年 11 巻 1 号 p. 55-63
購入して2日間着用時には無症状であったのに, 天日干し後に着用したブラジャー肩紐に一致して接触皮膚炎を起こした60歳女性を経験した。肩紐のパッチテストが陽性を示したため成分分析を行い, 被疑物質で皮膚テストを施行した。検出された Di (2-ethylhexyl) fumarate (DEHF : trans体) は陰性であったが, DEHFの cis 異性体である Di (2-ethylhexyl) maleate (DEHM) と, 実験室にてDEHFに紫外線照射をした産物もパッチテスト陽性を示した。Trans 体のDEHFに実験室において紫外線を照射すると, cis 体のDEHMが生成されることが実証され, これが患者にとってのアレルゲンと考えられた。ブラジャーの肩紐からは検出せず, 既往の塩化ビニル手袋皮膚炎由来と考えられたMono (2-ethylhexyl) maleate もパッチテスト陽性を示し, 類似物質のパッチテストの結果も併せて, 自験例のDEHMに対する反応は, 2-エチルヘキシル基, cis 二重結合, カルボキシル基という3つをそろえていないと抗原として認識されないことがわかった。